ラ・ぺルラ

ラ・ペルラ

037 朝の一幕

小鳥のさえずる声と明るくなってきた視界に、ぼんやりと覚醒する。 もう、朝か…… なんか、昨日今までの自分を反省し、タマキちゃんにも謝って、アスル・アズールにも邪魔をしないと約束して、代わりに日本に還れる時は私たちの意思を優先すると言ってくれ...
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036 二人の乙女(アスル・アズール)

~アスル・アズール~『あ、アスル・アズール……?』『どうした?』『いや、見たことない顔してるから……一体、何があったのかと……』 先程のやり取りを思い出してクスリと笑う。 本当に面白い。 異世界から来た十一代目の乙女――ミオ。 乙女と思われ...
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035 変化

ふう、とため息が漏れる。 ここに来て自分がしてきたことに対する、自嘲故に。 ――なんて、ちょっと偉そうに言ってみても、やってきたことは変わらない。正直、目が覚める(という感じ?)と、今までしてきたことの数々が、穴があったら――いや、穴を掘っ...
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034 自覚

「おい、もう茶はないのか?」 フィデールの言葉にぼけっとしてると、カップと器を持ってる私に、アスル・アズールが覗き込むようにして尋ねた。「…………ないよ」 まったく、後から来てあるわけないでしょうが。 あーもう、こいつがいると心がやさぐれて...
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033 爆弾投下

心にいつまでも残っていた記憶を吐き出すと、小さくため息をついた。 |蟠《わだかま》っていた月日を考えると、思ったより淡々と語れたなと思った。 でも、視線を落とすと、やっぱり口にすることに不安があったのか、カップを見るとお茶が揺れていた。 そ...
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032 過去

永遠に変わらない人の思いなんてない。 特にアスル・アズールのようなヤツは、それが激しい。多分、私が普通の女の人と同じようなことをしたら、あいつはいっぺんに目が覚める。いや、興味を失くす……というほうが正しいかな。 どちらにしても、自分の存在...
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031 それぞれの思い(フィデール→ミオ)

~ フィデール ~ かすかに聞こえる波の音を聞きながら、木陰でのんびりと女性をお茶を飲む。 ――こんな日が来るなんて思いもしなかった。 まあ、ミオさんは……女性、という言葉でくくるには少し規格外な人だけれど。 でも、意外なことに、静かな雰囲...
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030 考察(フィデール→ミオ)

~ フィデール ~「ミオさんっ!」 知らずに掴んでいたミオさんの腕。 そして自分でも信じられない程の大きな声で彼女の名を呼んでいた。 その声の大きさに驚いたのか、ミオさんは一瞬動きが止まる。「どうしたんですか?」「……。いや、どうしたもどう...
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029 衝撃(タマキ→ミオ→フィデール)

~ タマキ ~「偽物を残して何の意味があるんですか?」 自虐的な言葉。 でも紛れもない事実だ。私は偽物なのだから。 それでも、はっきり認めたら、今まで抱えていた心の中の霧が一気に消えていくようだった。 アスル・アズールさんはすぐに答えない。...
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028 考察(アスル・アズール→タマキ)

~ アスル・アズール ~ どうしたいのかと尋ねても、タマキはなかなか口を開かない。 言いにくいことだというのは分かる。が、切り出した以上はきちんと話をして欲しいものだが――「ふう……話したくないのなら無理に聞く気はない。だが、次はないと思っ...
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027 ミオ、覗き見する(ミオ→アスル・アズール)

軽く扉を叩いて、しばらくしてそっと開けた。 タマキちゃんの所に来る人は限られている。それに時間通りならタマキちゃんはお茶の用意をして待っていてくれる。 でも今日はアスル・アズールもいるから、ちょっとだけ開けて中を確認する。「おはようございま...
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026 図星だと答えに困る

アスル・アズールと二人で白い廊下を歩く。 黙っていれば普通なのになぁ、などと思っていると、それを察したかのように尋ねてくる。「そういえば、彼女はいつからここに居るんだ?」「は? なに言ってんの。私と同じだって言ってたじゃないか」「そうか? ...
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025 聖地での朝の会話

聖地と言われるだけあって、そこはまるでどこかの修道院のような生活ぶりだった。 ぶり、というのは私自身がそういう生活をしていなくて、話とかで得た知識からそんな印象を受けたから断定はできない。 でも、朝早く起こされて大きな部屋に連れて行かれて、...
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024 時には逃げるという選択肢も必要なのだ

タマキちゃんとの間で話がまとまった。 もう一度、二人の関係を口にしてタマキちゃんに確認を取る。「じゃあ、おさらいでこんな感じでいい?」「はい。それと偶然だけどここに一緒に来たことで、私がミオさんと離れたくないって言うんですよね。やっと会えた...
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023 逃げ出すための口裏あわせを

コホンと咳払いを一つして気を取り直す。「ええと、見苦しいところを見せちゃって悪かった。アイツのことを言われると、どうしても拒否反応が出てねぇ……」「いえ、それにしてもミオさんって、そんなにアスル・アズールさんのことが嫌いなんですか?」 綺麗...
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022 乙女会談

ここに来てだいぶ経つせいか、タマキちゃんは人見知りはするものの慣れた感じでお茶を入れてくれた。 タマキちゃんの様子を見ていると、カップを目の間に出される。「どうぞ」「あ、ありがと」「いいえ。でも嬉しい。私にも同じような人がいて――」 少し涙...
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021 聖地と乙女

魔法とは便利なシロモノである、と改めて思ったのは聖地へ行く時だった。 日本でなら新幹線、もっと早くしたいなら飛行機――と交通に関してはそんな感じだろう。 でもここには魔法がある。フィデールの説明によれば移動の魔法は主に二つあるという。 一つ...
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020 動揺

『早く乙女だと認めてしまえ。乙女なら、今のフィデールの状況もいい方向へ持っていくことが出来る。乙女の発言は、絶対なのだから』 耳元で囁かれる言葉は甘く、普通の女ならコロっと落ちてしまいそうな感じ。 でも、知っててやってるんだろうな、などとど...
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019 悪魔のささやき

結局、私はフィデールに諭されて離宮に戻った。 場所は分かるかとの問いに、ただ頷くだけで精一杯で、フィデールの顔をちゃんと見れなかった。 人に会わないようにこそこそと歩いて離宮へと戻る。来る時は興味津々な状態だったのに、今は見る影もない、って...
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018 本当の優しさ

叫ぶだけ叫んで、私はその場所を後にした。 身分、ってのに全然縁がなく生きてきたせいか、身分という壁のせいでその人自身を見ないこの世界に対してものすごく悔しく感じて。 特に、似ていると思っていたアスル・アズールさえ、そんな考えだったが信じられ...
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017 考え方の相違

山積みになっていた書類はお昼過ぎには片付いた。思ったよりもかなり早い。まあほぼそのまま流していったってのが早さの秘訣なんだろうけど。 本来ならもう少し目を通さなければいけないのだろうが、現在の偏った状況を変えるためにもいいだろうということに...
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016.5 フィデールから見た二人

昨夜はシエンに付き合ってほぼ寝ていなかった。 シエン――ミオさんの前ではアスル・アズールと呼んだほうがいいのか。間違ってシエンと呼んだ日には、ミオさんから思い切りツッコミが入りそうで怖い。 気をつけなければ――そう思っているのに、なぜかミオ...
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016 フィデール攻略-2

爽やかな笑みと、話の内容は必ずしも一致するものではない、と思う。 今まさに自分がそれだ。いつもより極上の笑みを浮かべている(はず)けど、内容は相手を脅すもの。「場合によっては黒い髪のかつら被ってスカート履いて、実は女でしたーって言って回るか...
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015 フィデール攻略-1

のっけから、そう、のっけからというのが正しいと思う。 フィデールが何を言われるのか、内容によっては怒りたくなるような内容かもしれない――そう思っていた。 なのに、王から出てきた言葉は――「聖地に行って、《《本物の》》の“玉の乙女”を迎えに行...