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第4章 伝説と真実、そしてライゼールへ-8

次の日の朝、リナは部屋の中の荷物をまとめた。 とはいえ、前にこの部屋に入った時にも、同じように出ていこうと思っていたから、まとめるものなどほとんどなかった。 まとめていたのは城の厨房のおばさんたちからもらった携帯食。実はこれが一番大きな荷物...
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第4章 伝説と真実、そしてライゼールへ-7

コンコンと控えめに扉を叩く音に気づく。 ゼルガディスはガウリイを手で制すと、そのまま扉に近づいた。「誰だ?」「アメリアです。少し話があって――遅くにすみません」 聞きなれた声にゼルガディスは安堵しながら扉を開けた。「こんな時にすみません」「...
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第4章 伝説と真実、そしてライゼールへ-6

リナはガウリイに別れを告げたあと、荷物をまとめた。さして荷物はないし、前にまとめてあったので時間はかからなかった。 本来ならすぐにでも出ていこうと思ったが、立ち上がると眩暈がする。 もしゼフィーリアに向かう途中にゼロスに待ち伏せされていたら...
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第4章 伝説と真実、そしてライゼールへ-5

――あたしがここでやるべきことは終わったわ。だから、さよなら、ガウリイ。 心のどこかでこの言葉がでてくることを覚悟していた。 けれど、覚悟していても衝撃は強かった。頭の上から足のつま先までいっぺんに凍りついたような気持ちを味わう。 ガウリイ...
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第4章 伝説と真実、そしてライゼールへ-4

隠していた自分の秘密はあらかた話し終わった。 後は、彼らが自分を見る目がどう変わるか――実はそれが一番怖かった。 大事、なのだ。彼らが。 リナにとって大事なのは家族、そしてゼフィーリアだけだったのに、いつの間にかそれ以上に大事に思うものがで...
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第4章 伝説と真実、そしてライゼールへ-3

最初の人――神がはじめて創った人間。そしてゼフィーリア王家の始祖。 それは小さな子ども以外誰しもが知っていることだ。「創世記を見て、おかしいと思ったことがない?」 リナは真剣な表情でみんなを見た。 しかし、創世記というと、本の中でも分厚い部...
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第4章 伝説と真実、そしてライゼールへ-2

ゼルガディスの真摯な瞳に、リナは降参するしかなかった。 もし自分が隠していたせいで、自国やエルメキアに不利になっても困る。それに、ライゼールを、ゼロスを相手にするのに、一度でけりをつけなければ被害者の数も多くなるだろう。 それはリナも望むこ...
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第4章 伝説と真実、そしてライゼールへ-1

創世記にはこうある。 |赤の竜神《スィーフィード》は人という存在を創りたもうた。 そは、白い肌黒い髪に、赤の竜神の色を象徴する赤い色を瞳に宿した一人の女性。まさに赤の竜神の化身のような姿でもって、その後に創られた者たちの先頭に立ち国を興す。...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-12

ガウリイは柄を握り締め、「光よ!」と叫んだ。 その言葉に応じてか、柄から青白く光る刀身が瞬時に現れた。「なっ!?」「まさか……伝説の『光の剣』!?」 いつから存在するのかは不明だが、刀身が文字通り光でできていて、魔族さえも一撃で屠ることがで...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-11

戦いの場は狭い部屋からバルコニーを経て庭へと移った。 二人の力はどちらも強く、両者とも引けをとらない状態だった。互いに相手を倒す決定的な力が足りない。 とはいえ、長引けば体力がない分リナのほうが不利になる。それに魔族の力を手に入れたというだ...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-10

リナが前ゼフィーリア女王の第一子――この言葉を聞いたとき、ゼルガディスは今までにないほど驚いた。 ゼルガディスはリナがこの城に来た時に、リナの素性を調べていた。そして、リナは今は隠居している前王の落胤ではないかという推測をした。 しかし、シ...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-9

「おいっしっかりしろ!!」 シルフィールはルークに顔を軽く数回叩くと、だんだん意識がはっきりしてきたのか、「……きゃあ! すみませんっ!!」と叫びながらルークから離れる。 慌てて離れたためよろけてしまい、ルークが倒れないようにと腕を掴む。 ...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-8

旧世界の遺産――魔族の欠片と聞いても、リナはピンと来なかった。 神族も魔族も神話の中の物語であり、今はただ、その名残として遺跡が各所に残るのみだ。 あちこちに建っているスィーフィードを祀る神殿も形だけのもの。「……で、あなたはその魔族の欠片...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-7

「んじゃ、ちょっと荒っぽいけど、シルフィールには風の結界を張ってもらって、あたしが風の魔法で押し出す方法で行くわよ」「……え!?」「まあ、荒っぽいけど、|浮遊《レビテーション》でちまちま移動するよりはだいぶ早いと思うから」「……今さらっと言...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-6

「ですが、どうやって行けば……扉は閉められてしまいましたし……」「そうね。……と、ここからエルメキア城までどれくらいなの?」「そうですね。ここがランドール家ならそんなに離れてはいません。歩いてもほんの少しで着きます。五聖家の家はエルメキア城...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-5

馬鹿にされちゃあ困るわね――そんな表情を浮かべてデビットとゼロスを睨みつけた。 リナは余裕ありげな顔をするが、本当は今の体調がすこぶる悪い。それにデビットはともかく後ろに控えるゼロスの力は予測できない。 だが、負けるわけには行かない。そのた...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-4

「大丈夫ですか? リナさん」「すみません……あまり、大丈夫、じゃ……」 いまだに眩暈のする状態で、それでもリナはなんとかシルフィールに答えた。 厚い石でできた牢獄のような部屋。ここがどこか分からないが、彼らは自分たちをすぐに殺す気がないと判...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-3

アメリアの声に、ガウリイは僅かに光を見つけた気がした。「本当か!?」「はい! すみませんが地図を持ってきてください!!」「分かった」 ゼルガディスが素早く返事をして部屋から出ていく。 この部屋から執務室は近く、ゼルガディスは一枚の丸めた紙を...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-2

現在、城の主であるガウリイは、同じ五聖家であるゼルガディス、ルーク、シルフィールと客人アメリア、そしてリナと食事を摂ることになっていた。 朝食のとき、リナは無事に部屋まで戻れただろうか、と心配しながら席つく。 けれど食事が来ても、リナとシル...
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第3章 リナとゼロス、そして創世記-1

城で下働きをしている者たちの朝は早い。まだ完全に夜が明けていない頃から動き出す。特に城内の食事を一手に引き受ける厨房は、ピークの時は戦場のようになる。 今はまだ余裕があるのか、下働きの女性たちはパンを作るために生地を練ったりしている。 その...
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幕間 邂逅 出会い

アメリアとの出会い編。※ 魔法に関して少しだけネタバレ。
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-17

信じられなかった。 失くしたはずのピアスが、ガウリイの右耳に飾られていたことが。「うそ……」「嘘じゃない。確かにオレも最初は同一人物とは思わなかった。だってそうだろう? ゼフィーリア女王だった人が、かの国にない色をまとって旅人として目の前に...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-16

――実はあいつはリナの前に別の女性を好きになっていた。  けれどその女性とは付き合うことも、滅多に会うこともできない状況だった。  だから、あいつは近くにいるお前を身代わりにしたんだと思う。 ベッドに腰掛けるリナの頭にはゼルガディスの言葉が...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-15

その日の夕食は暗殺者に狙われるというハプニングがあった割には明るいものになった。それは主であるガウリイから笑顔が絶えないせいだ。鼻歌でも聞こえて来そうなほどご機嫌なのが分かる。 ゼルガディスは帰ってきた時とまるきり違うガウリイの態度に、気に...