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第11話 旅の再開(4)

慎一たちに対して二人の見解は相違を見せた。 そのせいか、二人の間にまた微妙な空気が流れる。(確かに、わたしがしていることって、他の人とは反対のことをしてるんだよね。でも、魔物狩りをしているのはこの世界で生計を立てていくためだろうし、話せばき...
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第11話 旅の再開(3)

優花はベルディータの力でリグリアの近くまで移動した。ここからまた徒歩で移動になる。極力目立たないために、一瞬で移動できることは伏せるようにしている。 通常であれば優花とベルディータの間で会話が途切れることなどほぼないのだが、宮を出た後の二人...
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第11話 旅の再開(2)

「あー……うん、みんながわたしよりしっかりしているのはわかっているけど……」 優花はファーディナンドの説明に項垂れたくなった。 確かに、慎一などは優花が変な夢を見た――言うだけで話を膨らませて、何か期待したような状態だった。それを体験するの...
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第11話 旅の再開(1)

初めから決めていた数日の滞在を、優花はもやもやした気持ちのまま過ごした。 そしてとうとう宮を出る日になった。(なんか……こんな状態でベルさんと二人きりで大丈夫かな?) 何も教えてくれないベルディータに、優花は不信を持ち始めていた。 二人で居...
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第10話 一時帰還(6)

結局、ベルディータが確認した北の森のことについては一時保留になった。 推測はいくつか立てられたものの、それが正しいのかまでは分からない。ただ、この先周囲の術式を解除――魔物を消す――していくことでどうなるか、注意を払うことになった。 そして...
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第10話 一時帰還(5)

なんとなく心に|蟠《わだかま》りを感じながら、夕食を摂り、体を清める。 風呂は身を清めるもの――としていたが、優花が使用しているのは彼女個人のものと言っていい。そのため、浴室で体を洗って湯船に浸る。 宮の外でも衛生面に気を付けているのか、あ...
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第10話 一時帰還(4)

優花は今の時間を考えてから、談話室に向かった。このくらいの時間なら、宮に訪問する人も減り自然に談話室に人が集まる。 以前の優花は談話室に行ったことがない。談話室で話をするよりも先にすべきことがあったから。というか、ファーディナンドがあまり人...
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第10話 一時帰還(3)

ファーディナンドの部屋から出る時、ふ、と優花は何かを感じた。(ん?) 優花は振り返って室内を見る。もしかして何か忘れたのかもしれない、と思って。でもそれが何なのか分からなかった。「どうかしましたか?」「あ……いえ、別に……」 ファーディナン...
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第10話 一時帰還(2)

「全く……あの方を留まらせ、私たちの名を平気で口にし、そしてさらにもう一人のあの方まで味方にしてしまった。今まで誰もあの方を動かすことは出来なかったのに……それでも、そう言うのですね」 これは褒められているのだろう、というのは分かる。 けれ...
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第10話 一時帰還(1)

次の日、優花とベルディータはリグリアの村をあとにした。 いろいろ思うところはあったが、これ以上二人が何かしてやれることもないと判断したためだ。 そのあと二人は聖水鏡宮に一時的に戻ってきた。 とはいえ、ベルディータの存在を知られるわけにはいか...
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第09話 変化(6)

自分には一人の人の思いをすべて抱え込むなんて無理だと思っている。だからネレウスのことも逃げたと言っていい。 彼は自分のしたことを悔いていたけど、だからといってしたことが帳消しになるわけではない。勝手に許した後のエリナたちの気持ちを考えたら、...
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第09話 変化(5)

話し終わると、ネレウスの身柄は一度領主の下へ行き、これからをどうするのか検討することになった。 優花はまだ疲れているだろうということで、そのまま部屋に留まる。一人でぼうっとしていると、しばらくしてベルディータが戻ってきた。「少し食べ物をもら...
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第09話 変化(4)

嬉しいと思った優花は、頬が緩んでいくのを止められなかった。 目が細くなり、口端が上に持ち上がる。「ユウカさん?」 黙ったまま笑みを浮かべる優花に、村長が心配して尋ねる。「はい?」「顔が笑ってるぞ」 何を言われたのか分からず返事をすると、ベル...
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第09話 変化(3)

話し終えた後、彼らは一様に黙り込んだ。 ベルディータもある問題が浮上してきたため、それに関して考え直さなければならない。その問題は優花がどうにか出来ることではなく、必然としてベルディータが片づけなければならない。 もともと、この世界の問題は...
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第09話 変化(2)

間の悪いことに扉を叩く音がする。 でもここできちんと話をしておかなければ、後々引きずるかもしれない――そう考えて、優花は返事をするのに躊躇った。 けれど、ベルディータの方は気にしていない素振りで立ち上がると、扉に近づきゆっくりと開けた。扉の...
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第09話 変化(1)

目の前には心配そうなベルディータの顔。 優花の意識が戻ったのを確認したのか、はーっと深く息をはいた。 それを見てずいぶん心配かけてしまったことが分かった。「ごめん」「心配した」「うん。心配させちゃってごめんなさい」「もう……あんなことはしな...
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第08話 影響力(11)

ヴァレンティーネは一瞬きょとんとした表情をし、そして次は満面の笑みを浮かべる。「ヴ、ヴァールさん?」「やっぱりユウカで良かった」「え?」「実はね、ユウカを選んだのは、僕の代わりをして欲しいからって理由じゃなかったんだ」「…………はい?」 ち...
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第08話 影響力(10)

今まで自分はきちんとベルディータに向かい合っていなかった。 それなのに、相手の気持ちだけを確認しようとしていた自分を振り返って、ものすごく卑怯だと思えた。 いつの間にかに自分の保身のことばかり考えて、自分本位のずるい考え方になっていた、と。...
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第08話 影響力(9)

ずっと隠していた自分の気持ち。 誰かに話したかったけれど、こんな気持ちは誰にも言えないと思っていた。 優花は手をぎゅっと握り締めて、もう一度自分の思いを口にした。「ベルさんのことでいろいろ考えると、どうしても『怖い』って思うのが最後に来ちゃ...
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第08話 影響力(8)

つくづく世界にはいろいろ不思議なことが溢れているものだ、ということを優花は半年前に知ることになった。 半年前はごく普通の女子高生だったのに、今現在そんなものは陰も形もない。 いきなり異世界に呼ばれ、神様を押し付けられた。 とりあえず神様なん...
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第08話 影響力(7)

気づいた時には魔物とベルディータたちの間に立っていた。 手を広げ、周囲には魔物を守るかのように映ったことだろう。 けれど、そんなことには気づかずに、いきなり胸に衝撃を食らう。その後襲うのは激しい痛み。出血するほどの傷は服をあっという間に赤い...
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第08話 影響力(6)

クロクスに言わせると、優花は他の人と違って魔物を生み出したエリナを偏見の目で見てないと言う。 それならベルディータも同じだろうと思ったので聞いてみた。 クロクスの答えはベルディータの持つ雰囲気が苦手とのこと。 ベルディータは厳密には人じゃな...
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第08話 影響力(5)

優花にとって心臓に悪い朝食を終えた後は、ベルディータと別行動になった。 ここぞとばかりに村長がベルディータを頼りにして、あれこれ相談を始めた。もちろん断ることは出来ないので、ベルディータは仕方なくそれに付き合う。 優花も聞いたほうがいいのか...
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第08話 影響力(4)

夕食後もそのまま談笑を続け、ある程度遅くなってから二人は部屋に戻ることになった。 小さな村では毎日お風呂は無理らしく、もらった桶一杯のお湯でそれぞれ体を清めた後、二人は借りた部屋の扉を閉めた。「はー、なんか慌しい一日だったね」「まあ、こんな...