あまつひと 第12話 伝え忘れていた言葉 複雑な思いを抱えつつ、それでも後ろから抱しめているシュクルに体をあずける。背中に感じる熱が心地よくて自然と目を閉じた。 シュクルはミアディに対して見返りを求めない。かといって突き放すわけではない。 ただ、ミアディのあり方を正そうとすることは... 2019.03.05 あまつひと
あまつひと 第11話 朝のひとときと戸惑い 朝、二人はいつもより遅めに起きた。 体の疲れから、いつもの時間に起きられなかったためだ。 それでも、二人はどこか嬉しそうだった。「すぐご飯の用意しますね」「ああ。俺は火を熾してから、顔を洗ってくる」「はい、お願いします」 囲炉裏の中は僅かに... 2019.03.05 あまつひと
あまつひと 第10話 確かめ合う 帰り道、母エマから聞いた話を思い出すと、怒りがふつふつと湧いてきてどうしようもなかった。 エマが話した話が本当なら、ミアディの怯えた様子も頷ける。疎まれ続ける生活が長引けば長引くほど、心は萎縮していくものだ。 戻ってきたミアディを見て、どう... 2019.03.05 あまつひと
あまつひと 第9話 現在、何をすべきか 「ありがとう、母さん」「とりあえず、当分は一休みね。ミアちゃんと仲良くやるのよ」 エマの言葉にシュクルは「うっ……」と言葉に詰まる。「ちょっと、その反応は何なの? ミアちゃん苛めてないでしょうね?」「それは……」 シュクルは実家で仕事の報告... 2019.03.05 あまつひと
あまつひと 第8話 過去(再会) その日の昼過ぎ、シュクルは仕事を終え、新しい家に戻ることになった。 仕事の疲れが残っているため、少しでも休みたかったが、あの家でゆっくり休めたことがなかった。 別にミアディと仲が悪いわけではない。 ただし、仲がいいわけでもない。 最初よりよ... 2019.03.05 あまつひと
あまつひと 第7話 歩み寄り(2) 水汲みで思わぬ展開になり、ミアディはほっと安堵の表情を浮かべた。 こんな風に、誰かと楽しく会話をすることが出来るとは思わなかったから。(良かった。ティニとも前のように話すことが出来るようになったし) 叩かれた頬が少しばかり痛かったが、それで... 2011.11.10 あまつひと
あまつひと 第6話 歩み寄り(1) 婚儀から数日たち、二人だけの生活もなんとか慣れてきた。 シュクルは仕事で呼ばれれば一、二日居ないこともあったし、エマが何かと顔を出してくれていたので、あまり二人で生活しているのだという実感はないが。 しかも、あれから二人は床を共にすることが... 2011.10.27 あまつひと
あまつひと 第5話 交わった視線 かろうじて夜が明ける前に、やっと祝宴が終わった。あれほど騒がしかったのに、今はわずかに虫の声しか聞こえないし、その場に明かりひとつもなかった。 ただ、宴の片づけが終わってないことから、あの喧騒が夢でなかったと分かる。 ミアディは最後のほうは... 2011.10.22 あまつひと
あまつひと 第4話 天つ人の婚礼-その後 ミアディはエマに新たな着物を着せられていた。 普段着より豪華なそれに袖を通すのにためらいを感じたが、普通の人の婚礼でもこれくらい着飾るのは当然だ、とエマに説得される。 普段は薄めの布でできた下着になるものを身に着け、その上にしっかりとした布... 2011.10.21 あまつひと
あまつひと 第3話 天つ人の婚礼-シュクル 一方、シュクルのほうは、後に着る服だけ渡されて放り出された。 この扱いの差はなんなんだと思ったが、この場合は仕方ないかとため息をついた。こういった場合、人に見られたくないのは女性のほうだろう、と無理やり納得したせいだ。 シュクルの家からは共... 2011.10.19 あまつひと
あまつひと 第2話 天つ人の婚礼-ミアディ シュクルが出て行ってしばらくすると、控えめに扉を叩く音がした。こんな格好でどうしようと思うものの、「開けてもいいかしら?」と問いかける声を聞いて、反射的に「はい」と答える。 それを聞いて静かに扉を開けて入ってきたのは、シュクルの母、エマだっ... 2011.10.18 あまつひと
あまつひと 第1話 天つ人の婚礼-はじまり それは、はるか昔のことだった。 まだ世界には秩序がなく混沌とした状態で、地上で、天空で、天つ神と大いなる魔と呼ばれるものたちが戦っていた。そのため、地上に生きる人々はその戦いに怯える日々を送っていた。 何の力ももたない人には、天つ神と魔の戦... 2011.10.17 あまつひと