NOVEL

ラ・ペルラ

019 悪魔のささやき

結局、私はフィデールに諭されて離宮に戻った。 場所は分かるかとの問いに、ただ頷くだけで精一杯で、フィデールの顔をちゃんと見れなかった。 人に会わないようにこそこそと歩いて離宮へと戻る。来る時は興味津々な状態だったのに、今は見る影もない、って...
ラ・ペルラ

018 本当の優しさ

叫ぶだけ叫んで、私はその場所を後にした。 身分、ってのに全然縁がなく生きてきたせいか、身分という壁のせいでその人自身を見ないこの世界に対してものすごく悔しく感じて。 特に、似ていると思っていたアスル・アズールさえ、そんな考えだったが信じられ...
ラ・ペルラ

017 考え方の相違

山積みになっていた書類はお昼過ぎには片付いた。思ったよりもかなり早い。まあほぼそのまま流していったってのが早さの秘訣なんだろうけど。 本来ならもう少し目を通さなければいけないのだろうが、現在の偏った状況を変えるためにもいいだろうということに...
ラ・ペルラ

016.5 フィデールから見た二人

昨夜はシエンに付き合ってほぼ寝ていなかった。 シエン――ミオさんの前ではアスル・アズールと呼んだほうがいいのか。間違ってシエンと呼んだ日には、ミオさんから思い切りツッコミが入りそうで怖い。 気をつけなければ――そう思っているのに、なぜかミオ...
ラ・ペルラ

016 フィデール攻略-2

爽やかな笑みと、話の内容は必ずしも一致するものではない、と思う。 今まさに自分がそれだ。いつもより極上の笑みを浮かべている(はず)けど、内容は相手を脅すもの。「場合によっては黒い髪のかつら被ってスカート履いて、実は女でしたーって言って回るか...
ラ・ペルラ

015 フィデール攻略-1

のっけから、そう、のっけからというのが正しいと思う。 フィデールが何を言われるのか、内容によっては怒りたくなるような内容かもしれない――そう思っていた。 なのに、王から出てきた言葉は――「聖地に行って、《《本物の》》の“玉の乙女”を迎えに行...
リチェルカーレ

第8話 夜明け前

暗い室内の中は、ろうそくの小さな炎がいくつか揺らめいている。 もともと地界は薄暗い世界だが、今は夜明け前なのでこの小さな炎がなければ真の闇になるだろう。 けれど、部屋の主は二人とも眠らずにいた。「……詐欺だわ、貴方があの子だったなんて」 広...
ラ・ペルラ

014 対照的な二人

女だとバレないよう&アスル・アズール対策で、今日はいつもの服に上着を羽織っていた。 さらに気分的に眉尻を吊り上げて、いつもよりキリっとした表情をしてみて鏡でチェックする。 うん、大丈夫かな?「お待たせー」 確認してから食堂に戻ると、フィデー...
リチェルカーレ

第7話 あなたのそばに。

再び天界。 ここは光に近いというけれど、地面に草木もあり人界とほとんど変わらない。人界よりも淡い光に包まれたこの場所は、逆に温かくて居心地が良かった。 マリアベールはのんびりとお茶をして時間を過ごすのは、ここに来てからの日常になっていた。 ...
ラ・ペルラ

013 朝から迷惑

久しぶりに安心できたせいか、朝までぐっすり眠りこんだ。 おかげでこの館の主であるフィデールと、昨日やって来たアスル・アズールとどんな話をしたのかなんで全く想像していなかった。 どちらかというと、扉をドンドンと叩く音が聞こえるまで――正確には...
ラ・ペルラ

012 見えない鎖(フィデール)

百代目、ラ・ノーチェ国王は現在二十三歳の独身である。 彼に対して一番耳にする情報は、“変人”の一言に尽きる。 それもそうだろう。彼が王位を継いで二年と少し。その間、一度たりとも人の前に姿を現さない。現わさないというのは語弊がある。現わしても...
リチェルカーレ

第6話 三日目の夜

地界―― やっと三日間の婚礼が終わった、というのがクレアトールの感想だった。 華やかすぎてこの三日間は終始ドキドキしっぱなしだったし、来る人達に笑みを繰り返していたため、顔の筋肉が引きつりそうだった。 やっと思いでその宴が終了すると、今度は...
リチェルカーレ

第5話 心の階(きざはし)をのぼって

天界は光が頭上にあるため天候がなかった。 何もなければ明かりが降り注ぎ続けるこの天界は、時間になるとミカエルの力で光を遮る。それが人間界では夜にあたり、天界では薄暗い程度のものになる。 人間界と違う“夜”にマリアベールは驚いたが、慣れるのは...
ラ・ペルラ

011 変人認定(フィデール)

信じたくない事実が真実になってしまった――と頭を抱えたくなった。 よりにもよって彼女が“玉の乙女”とは――もっと女らしい人なら良かったのに、というのが本音だ。「いや、あの……できれば『引っかかったな』とか言って欲しいんですけど。いつもの貴方...
ラ・ペルラ

010 どうしても勝てない(フィデール)

雑事を片付け自室に戻ったのはかなり遅い時間になってしまった。扉を開けて明かりを灯すとふう、とひと息ついた。 それにしてもあの二人の組み合わせは心臓に悪い。最強の上、最凶コンビではないじゃないですかー! と悲鳴を上げて逃げたくなる。 いやいっ...
ラ・ペルラ

009 郷に入りては郷に従え

唇は触れただけ。恋人とのキスのようにそれ以上深くなることはなかった。 すぐに離れてある程度の距離を取る。「ま、ここにいる間、口説こうと思うんでこういう意味でよろしくな」「ななななな……なにをするっ!?」「男でも女でも押し倒すほうが好きって言...
ラ・ペルラ

008 お熱い夜はお好き?

カチャカチャといくつか小瓶をあけて、少しずつ茶葉を取り出してポットに入れていく。これとこれとこれ。そしてきわめ付けがこれ、と。うん。こんなもんかな。 蒸らすのに時間がかかるので、沸いたお湯をフィデールの顔を見ないうちに入れた。言伝があるくら...
ラ・ペルラ

007 国王は変人である

真面目な顔でアスル・アズールが答える。 ラ・ノーチェ国王は“変人”だと。「そりゃまた……なんと言っていいか……」「まあ、|政《まつりごと》に関して問題はないんだがな。だから国民もある程度は目を瞑っているというか」「はあ」「変人というと変なも...
ラ・ペルラ

006 世の中いろんな縁がある

思い切り声を上げるのはとても気持ち良かった。数日振りで気分良く歌ったので、ストレス解消できた。 歌い終わった時は、周りからパチパチと拍手をもらった。 あ、やばい。歌った爽快感で我を忘れてたよ。目立ちたくなかったのに。「上手だな」 見ると笛を...
ラ・ペルラ

005 元の生活より優雅なのだ

異世界に来て数日。 生活は悪くない。大国の王宮ってことで、食べ物はいいし、寝る部屋もふかふかのお布団がある。 フィデールが住んでる離宮から出なければ、余り人と会うこともなく、詮索されることもない。 それにフィデールは最高祭司だけあって、離宮...
ラ・ペルラ

004 とりあえず事情を聞く

人というものは、先に騒がれると後から騒ぐことって出来ないと思う。機先を削がれるというか、ね。パニックになっている相手を見てると、だんだん冷静になってくるみたい。 ということで、フィデールのおかげで異世界に来ちゃったってのに意外と冷静な私。 ...
ラ・ペルラ

003 どうやら間違えられたらしい

ひょんなことから異世界に来てしまった私。でもどうやら帰れるようで、一安心。 そうなると今度はそれまでの間、ここで生活できるように情報収集しないとね。「そうですね。まず、この世界のことからお話しましょう。あ、お茶でも入れましょうか?」「あ、頂...
ラ・ペルラ

002 気づくと異世界だった

一人で騒いでいる男に、私は軽くぺしんと叩く。「うるさいっ」 いい加減現実に戻ってくれ。でないと話が全然見えないんだ。それに早く戻ってバイトに行かなければ、私の夕飯のおかずが一品どころか二品、三品と少なってしまう。万年欠食児童の私には死活問題...
ラ・ペルラ

001 叩かれて階段落ちた

「うわー! 間に合わない!!」  女にしては長身の体で細い歩行者用の道を一生懸命走る。 早くしないと電車に乗り遅れるっ! この辺は少々田舎なので、電車は十分に一本の割合。先に言っておくけど、十分後だとバイトに遅れてしまう可能性が高いのだ。 ...