NOVEL

女神の愛し子

13

お母さんが帰ってきて、晩ご飯を食べて、お姉ちゃんとテレビを見た後、わたしはお風呂に入って、今は湯船に浸かっていた。「『女神の愛し子』とは、巡る魂の中で、女神が惹かれた魂に、女神が印を付けるんだ。リーゼロッテの時には、胸にその印があった」 遥...
女神の愛し子

12

遥斗さんはあれ以上、昔の話をしてくれなかった。『人1人の人生――良いことも悪いこともある。それに、1日で語れることでもないんだ』 この言葉が、わたしの頭に残っていて消えない。何歳まで生きたのか分からないけど、あの場で語ったものは短すぎる。何...
女神の愛し子

11

彼女――梨世と2人で話すことができただけでも、嬉しいのに、つい名前で呼び合うようにして浮かれてしまい、更に梨世の手を取って、昔のように口付けてしまった。 ヤバい。やり過ぎた、と思ったけれど、真っ赤になった梨世を見て、「ああ、やっぱり彼女だ」...
女神の愛し子

10

お姉ちゃんと別れて、近江さんと2人で落ち着いて話ができる特別教室へ入った。勝手に使っていいのかな? と思っていると、近江さんから、部室として使ってなければ大丈夫とのこと。教室に入ってから、適当なところで椅子に座った。「あの、お姉ちゃんのこと...
女神の愛し子

9(莉里)

昔、婚約者だった――その言葉は衝撃的だった。2人には何かあるとは思ってたけど、まさか、前世で婚約者だったなんて。 ……正直、あの男の一方的な想いじゃないのかしら? なんて、思ったりもしたんだけど――そんな、簡単ものじゃなかった。 彼氏も居な...
女神の愛し子

わたしが感情的に訊ねると、お姉ちゃんは顔をしかめて口籠った。……って、本当に何を話していたの⁉ 余計気になるよっ。「俺が君のお姉さんの後ろ姿を見て、君と間違えたんだ」「わたし、と?」「ああ」 少しバツが悪そうな顔をしながら、お姉ちゃんに変わ...
女神の愛し子

放課後になって、友達と少し会話をした後、いつも通りに図書室に向かった。 いつもは、ある程度図書室で過ごして、読みきれなかったらその本を借りて行くんだけど、昨日の出来事のせいで本を借りることを忘れていた。まあ、昨日は次を探すこともできなかった...
女神の愛し子

6(梨里)

目の前の男の言うことが信じられなかった。 前世? なにそれ。でも、この男が言うことが本当なら、この男と妹が前世で恋人同士(だったかもしれない)ってこと? 私に前世の記憶なんてないけど、前世の記憶を持つ人がいるという話は聞いたことがある。それ...
女神の愛し子

5(遥斗)

教室を出たら、彼女にそっくりな後ろ姿の女子生徒を見つけた。思わず追って、肩に手をかけてみるものの、振り返った顔は、彼女と似ているけど彼女ではなくて。どうしようと戸惑っていると、張り付けた笑みで「説明しろ」と言われてしまった。 仕方なく、別棟...
女神の愛し子

4(莉里)

私の名前は鈴木《すずき》|梨里《りり》。高校2年生で、年子の妹、梨世との2人姉妹。両親は共働きで、多分、普通の家庭なんだと思う。 母もフルタイムで働いているので、家事は妹と2人でしている。母に言わせると、「2人とも、いつでもお嫁に出せるわ〜...
女神の愛し子

体がふわふわと浮いているような感じが抜けなくて、覚束ない足取りで家に帰った。 図書室であった事が現実味がなくて、でも、抱きしめられた時の相手の鼓動の速さとか、温かさとか、そういったのは夢じゃなくて現実で。でも、それを認識するのに、頭がキャパ...
女神の愛し子

トクトクと通常より早い鼓動が相手の胸から聞こえる。そのせいか、外の騒がしさが全然聞こえない気がする。 えーと、図書室で本を読んでいたのに、これは夢なのかな? 思わず思考を放棄しそうになるけど、相手の抱きしめる力強さとか、触れている面の熱さと...
女神の愛し子

わたしは放課後、図書室で本を読むのが日課だった。 校庭の賑やかさとは違い、静かな雰囲気と本の紙の香りがするこの空間が何よりも落ち着ける。今は本棚から面白そうな本を一冊取り出し、集中して一気に読み終わったばかりだった。(はー、面白かった!) ...
baby's-breath

第11話 旅の再開(4)

慎一たちに対して二人の見解は相違を見せた。 そのせいか、二人の間にまた微妙な空気が流れる。(確かに、わたしがしていることって、他の人とは反対のことをしてるんだよね。でも、魔物狩りをしているのはこの世界で生計を立てていくためだろうし、話せばき...
baby's-breath

第11話 旅の再開(3)

優花はベルディータの力でリグリアの近くまで移動した。ここからまた徒歩で移動になる。極力目立たないために、一瞬で移動できることは伏せるようにしている。 通常であれば優花とベルディータの間で会話が途切れることなどほぼないのだが、宮を出た後の二人...
baby's-breath

第11話 旅の再開(2)

「あー……うん、みんながわたしよりしっかりしているのはわかっているけど……」 優花はファーディナンドの説明に項垂れたくなった。 確かに、慎一などは優花が変な夢を見た――言うだけで話を膨らませて、何か期待したような状態だった。それを体験するの...
NOVEL

昔の小ネタ(ごはん)

特に置く場所がなかったので。テーマ:ごはんbaby's-breathの場合ラ・ペルラの場合BHVSCPの場合「うわっご飯だー」「前に言っていたのか?」「うん、そう。こんなところで食べられるとは思わなかったよー」 といいつつすぐに手をつける。...
baby's-breath

第11話 旅の再開(1)

初めから決めていた数日の滞在を、優花はもやもやした気持ちのまま過ごした。 そしてとうとう宮を出る日になった。(なんか……こんな状態でベルさんと二人きりで大丈夫かな?) 何も教えてくれないベルディータに、優花は不信を持ち始めていた。 二人で居...
ラ・ペルラ

037 朝の一幕

小鳥のさえずる声と明るくなってきた視界に、ぼんやりと覚醒する。 もう、朝か…… なんか、昨日今までの自分を反省し、タマキちゃんにも謝って、アスル・アズールにも邪魔をしないと約束して、代わりに日本に還れる時は私たちの意思を優先すると言ってくれ...
baby's-breath

baby’s-breath 登場人物

登場人物※順番は重要度より登場順の場合もあり。(一部メインは違います)ネタばれも含まれていますので、登場人物を忘れた頃に見るほうがおすすめかも。地球側|佐藤《さとう》|優花《ゆうか》 17歳(高校2年生)肩までの黒い髪に大き目の黒い目。童顔...
baby's-breath

第10話 一時帰還(6)

結局、ベルディータが確認した北の森のことについては一時保留になった。 推測はいくつか立てられたものの、それが正しいのかまでは分からない。ただ、この先周囲の術式を解除――魔物を消す――していくことでどうなるか、注意を払うことになった。 そして...
あまつひと

第12話 伝え忘れていた言葉

複雑な思いを抱えつつ、それでも後ろから抱しめているシュクルに体をあずける。背中に感じる熱が心地よくて自然と目を閉じた。 シュクルはミアディに対して見返りを求めない。かといって突き放すわけではない。 ただ、ミアディのあり方を正そうとすることは...
あまつひと

第11話 朝のひとときと戸惑い

朝、二人はいつもより遅めに起きた。 体の疲れから、いつもの時間に起きられなかったためだ。 それでも、二人はどこか嬉しそうだった。「すぐご飯の用意しますね」「ああ。俺は火を熾してから、顔を洗ってくる」「はい、お願いします」 囲炉裏の中は僅かに...
あまつひと

第10話 確かめ合う

帰り道、母エマから聞いた話を思い出すと、怒りがふつふつと湧いてきてどうしようもなかった。 エマが話した話が本当なら、ミアディの怯えた様子も頷ける。疎まれ続ける生活が長引けば長引くほど、心は萎縮していくものだ。 戻ってきたミアディを見て、どう...