お題2

femme fatale

+α.キス、すき、キス

窓から差し込んでくる日差しは目に痛いほど眩しかった。 いや、実際痛い。眠れず泣きはらした目には朝の日差しはきつかった。 ――結局、あたしは昔も今も、ガウリイにとって一番にはならなかった…… 昨日のことを思い出して、また目が熱くなってくる。 ...
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10. もう二度とはなさない

次の日、『カノン』の前で休業の張り紙を見て、オレはすかさずリナの家に電話した。 いや、リナじゃなくてもいい、オレが行くまでリナが逃げないように捕まえていて欲しいと思った。 数回のコール音の後、ガチャリという音が聞こえる。『はい、インバースで...
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09. 小さな約束さえ

食事が一通り終わると、食後のコーヒーを飲みながら一息ついた。 ルークは味はともかく量に満足したらしく表情が明るい。その間、オレはリナに対する思いがぐるぐると頭を巡っていた。 そんな迷路のようなオレの思考に終わりを告げる声が届く。「で、どうす...
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08. やさしすぎる微笑み

――なによ、それっ!? あたしはっ……あんたがずっと姉ちゃんを……っ! ――帰ってよ……あんたなんて嫌い、なんだから…………に、なるん、だから…… 辛くて辛くて、今にも泣き出しそうなのを堪えているリナの顔。 こんな顔をさせたいわけじゃないの...
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07. 言えなかったことば

『運命の出会い』はあるか? という問いに、リナは真面目な顔つきになって、オレにこう答えた。「でも、本当に『運命の出会い』なら、運命とか必然とかじゃないって思っても、その人と何回でも出会うんでしょうね。相手も自分も嫌だと思っても」「運命とか必...
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06. 運命や必然でなくても

――この女をもっと知りたい。 それが今のオレの願望。 ルビィはルビィなのか、またリナが演じているのか。どちらでもいい。とにかく目の前の女にものすごく惹かれた。 はじめはルナさんに似ているクールなイメージに惹かれた。 でも、彼女の中にルナさん...
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05. 千のなみだ

薄暗い部屋の中でベッドの軋む音と荒い息が重なる。オレは小さな体を思うまま味わった。 背中に爪を立て、断続的な悲鳴を上げる彼女は、限界が迫っていた。「……お、ねがっ……も……っ!」「も……少し……」 あと少しで訪れる限界を前に、ギリギリまで快...
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04. たったひとつ、願いが叶うのなら

『リトル・エデン』に辿りつく頃、この間の女がちょうど出てくる時だった。 声をかける前に向こうが気づいて、こちらを見て微笑む。「もう来ないかと思ったわ」「いや、仕事で遅くなって」「そう。あたし出てきちゃったけど、飲みなおす?」「いや、それより...
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03. 響く雨音

今日は待ちに待った金曜日だった。 今日だけは気合を入れて、仕事をちゃんと終わらせるようにと朝から書類に目を通していた。 細かい文字はそれだけで眠気を誘うような気がするけど、間違わないようにしっかりと目を通す。その後パソコンでメールのチェック...
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02. 想い出になんかできない

オフィスの窓際でオレは一つため息をついた。 あの日からオレの口から出るのはため息ばかりだった。「いい加減きっちり仕事しなさい」 ファイルでばさっと頭を叩かれて、やっと現実に戻る。振り返れば、オレの上司であるルナさんがいた。「ルナさん……」「...
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01. 覚めない夢

久しぶりに女を抱いた。恋人ではない、バーで出会った行きずりの女。 小柄で童顔でまだあどけなさが残るが、話をしている時に見せる笑みは大人びていて、彼女の年齢はいまいち掴めない女だった。だからまだ十代の少女なのか、それとも幼く見えるだけで実は二...