リチェルカーレ

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第9話 世界の下で

人界において二十年に一度の大祭が訪れた。世界の中心である柱の国は人々が集い賑わう。その人数は五年ごとの祭りの比ではなかった。どこもかしこも人が溢れているような状態だ。 王宮でも開いている部屋がないほどの来賓の数で、王であるアルベールは休むま...
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第8話 夜明け前

暗い室内の中は、ろうそくの小さな炎がいくつか揺らめいている。 もともと地界は薄暗い世界だが、今は夜明け前なのでこの小さな炎がなければ真の闇になるだろう。 けれど、部屋の主は二人とも眠らずにいた。「……詐欺だわ、貴方があの子だったなんて」 広...
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第7話 あなたのそばに。

再び天界。 ここは光に近いというけれど、地面に草木もあり人界とほとんど変わらない。人界よりも淡い光に包まれたこの場所は、逆に温かくて居心地が良かった。 マリアベールはのんびりとお茶をして時間を過ごすのは、ここに来てからの日常になっていた。 ...
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第6話 三日目の夜

地界―― やっと三日間の婚礼が終わった、というのがクレアトールの感想だった。 華やかすぎてこの三日間は終始ドキドキしっぱなしだったし、来る人達に笑みを繰り返していたため、顔の筋肉が引きつりそうだった。 やっと思いでその宴が終了すると、今度は...
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第5話 心の階(きざはし)をのぼって

天界は光が頭上にあるため天候がなかった。 何もなければ明かりが降り注ぎ続けるこの天界は、時間になるとミカエルの力で光を遮る。それが人間界では夜にあたり、天界では薄暗い程度のものになる。 人間界と違う“夜”にマリアベールは驚いたが、慣れるのは...
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第4話 心が伴わない豪華な婚礼

姉であるクレアトールは、妹のマリアベールに少し遅れて地界へと向った。 強すぎる薬のおかげで、クレアトールはまだ少しふらついたが、それでも体調の悪さを表に出すことはしなかった。それも何もかも使者から聞いた話のせいだ。 夫となる“ルシファー”。...
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第3話 霞んだ世界で待つ人

マリアベールは自分の意志を無視されたまま、天界へと嫁ぐことになった。 姉であるクレアトールとも地界の使者から受け取った小瓶を飲み干した後、そのまま気を失ってしまい、話も出来ないままで。 使者の話では、薬は闇に対する抵抗力を高めるものだという...
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第2話 突きつけられた選択肢

今年は人界において二十年に一度の大祭だった。 大祭とは、天界の“ミカエル”、地界の“ルシファー”は二十年をもってその任にあたる者が代わる節目の年でもある。 そのため、大祭は天界、地界において新しき支配者の初の顔見せになる。現在のミカエルとル...
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第1話 一日でも長く笑えるように

この世界は五層に分かれているという。 一番上から光、そして天界、人界、地界、闇の順で、それらを繋ぐための柱が中心にある。その柱は限られた者だけが別の世界を往来できるようになっていた。 人界は人が占める世界。いくつかの国に分かれて生活をしてい...