femme fatale 10. もう二度とはなさない 次の日、『カノン』の前で休業の張り紙を見て、オレはすかさずリナの家に電話した。 いや、リナじゃなくてもいい、オレが行くまでリナが逃げないように捕まえていて欲しいと思った。 数回のコール音の後、ガチャリという音が聞こえる。『はい、インバースで... 2006.04.07 femme fatale
femme fatale 09. 小さな約束さえ 食事が一通り終わると、食後のコーヒーを飲みながら一息ついた。 ルークは味はともかく量に満足したらしく表情が明るい。その間、オレはリナに対する思いがぐるぐると頭を巡っていた。 そんな迷路のようなオレの思考に終わりを告げる声が届く。「で、どうす... 2006.04.04 femme fatale
femme fatale 08. やさしすぎる微笑み ――なによ、それっ!? あたしはっ……あんたがずっと姉ちゃんを……っ! ――帰ってよ……あんたなんて嫌い、なんだから…………に、なるん、だから…… 辛くて辛くて、今にも泣き出しそうなのを堪えているリナの顔。 こんな顔をさせたいわけじゃないの... 2006.04.02 femme fatale
femme fatale 07. 言えなかったことば 『運命の出会い』はあるか? という問いに、リナは真面目な顔つきになって、オレにこう答えた。「でも、本当に『運命の出会い』なら、運命とか必然とかじゃないって思っても、その人と何回でも出会うんでしょうね。相手も自分も嫌だと思っても」「運命とか必... 2006.04.01 femme fatale
femme fatale 06. 運命や必然でなくても ――この女をもっと知りたい。 それが今のオレの願望。 ルビィはルビィなのか、またリナが演じているのか。どちらでもいい。とにかく目の前の女にものすごく惹かれた。 はじめはルナさんに似ているクールなイメージに惹かれた。 でも、彼女の中にルナさん... 2006.03.31 femme fatale
femme fatale 05. 千のなみだ 薄暗い部屋の中でベッドの軋む音と荒い息が重なる。オレは小さな体を思うまま味わった。 背中に爪を立て、断続的な悲鳴を上げる彼女は、限界が迫っていた。「……お、ねがっ……も……っ!」「も……少し……」 あと少しで訪れる限界を前に、ギリギリまで快... 2006.03.29 femme fatale
femme fatale 04. たったひとつ、願いが叶うのなら 『リトル・エデン』に辿りつく頃、この間の女がちょうど出てくる時だった。 声をかける前に向こうが気づいて、こちらを見て微笑む。「もう来ないかと思ったわ」「いや、仕事で遅くなって」「そう。あたし出てきちゃったけど、飲みなおす?」「いや、それより... 2006.03.28 femme fatale
lineage 第1章 出会い、そして、再会-10 ガウリイの爽やかな笑みと話の内容に、皆一瞬きょとんとするが、その後猛烈に反対の声が上がった。「おい、なに考えてるんだ!? こんな得体の知れない小娘を雇うなんて!」「お前、本当にロリコンかよ!?」「はあ!? なんであたしがあんたんとこで働かな... 2006.03.27 lineage
femme fatale 03. 響く雨音 今日は待ちに待った金曜日だった。 今日だけは気合を入れて、仕事をちゃんと終わらせるようにと朝から書類に目を通していた。 細かい文字はそれだけで眠気を誘うような気がするけど、間違わないようにしっかりと目を通す。その後パソコンでメールのチェック... 2006.03.27 femme fatale
femme fatale 02. 想い出になんかできない オフィスの窓際でオレは一つため息をついた。 あの日からオレの口から出るのはため息ばかりだった。「いい加減きっちり仕事しなさい」 ファイルでばさっと頭を叩かれて、やっと現実に戻る。振り返れば、オレの上司であるルナさんがいた。「ルナさん……」「... 2006.03.26 femme fatale
femme fatale 01. 覚めない夢 久しぶりに女を抱いた。恋人ではない、バーで出会った行きずりの女。 小柄で童顔でまだあどけなさが残るが、話をしている時に見せる笑みは大人びていて、彼女の年齢はいまいち掴めない女だった。だからまだ十代の少女なのか、それとも幼く見えるだけで実は二... 2006.03.25 femme fatale
こんなシーンで20のお題 17 噛み付くようなキス ※この話は「20.振り向いたその先」の前に当たります。 ルークにガウリイの想いを諭されてから、あたしは気づくとガウリイのことを見てることが多くなった。 見れば見るほど、やたら頬が熱くなってくるくらい、ガウリイの視線は想いが込められている。... 2006.03.20 こんなシーンで20のお題
lineage 第1章 出会い、そして、再会-9 暗殺者を一人氷漬けにしたまま、四人はそのまま動けないでいた。 三人はリナの力に驚愕し、リナは現実を突きつけられてとまどった。 リナが今まで相手にしていたのは、ゼフィーリアにいた盗賊たち。たまに魔法を使うものがいて、その力にしょぼいなーとは思... 2006.03.19 lineage
こんなシーンで20のお題 20 振り向いたその先 あたしは半分荒野と化しているサイラーグの街に訪れた。 ここはあたしが知る限りでも三回は滅んでいる。いや、冥王の時は見せかけの街だったし、魔王の時も街が滅んだとは言いがたいか。 けれど、三回もそういうことがあると、この街には何か因縁めいたもの... 2006.03.17 こんなシーンで20のお題
lineage 第1章 出会い、そして、再会-8 「リナよ、リナ=インバース!」 リナは堪えきれずに叫ぶように自分の名を口にした。『インバース』はリナの父方の祖母の生家のファミリーネームだ。 しかし、祖母は一人娘で、祖母が嫁いだ後は家を継ぐものがおらず、インバース家は断絶して現在は存在しな... 2006.03.11 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-7 「あの……いい加減離してくれないかしら? ってか、あのタオル取ってくれればいいんだけど」 いつまで経っても離さないガウリイに、リナはもじもじしながら、ガウリイの後ろを指差した。 タオルはそのままの体勢でも、ガウリイが手を伸ばせば届く範囲にあ... 2006.03.08 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-6 エルメキアは赤の半島の中では南にあり、ゼフィーリアに比べると暖かい。すでに春と呼べる季節だ。 周りには新しい草芽や、花が咲いている。小鳥のさえずりなども聞こえ、平和だな、と思う人が多いだろう。あちこちに小川などが流れていて、水に困ることはな... 2006.02.28 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-5 ゼフィーリア城は白い石を積み上げてできた城で、夜明かりをつけると薄く浮かび上がる様が幻想的だ。白い石が光を明かりを反射して、桜色に浮かび上がる。 昼は白亜の城のようで、夜は温かな優しい印象を見る人に与える。 さて、エルメキアでの出来事より一... 2006.02.26 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-4 ゼフィーリアとエルメキアが同盟を結んだという話は、すぐに各地で話題に上がるようになった。各王宮では更に詳しい話題が交わされている。 ライゼールも例外でない。 臣たちはウィリアムに、聖地であるゼフィーリアに侵攻するということは、赤の半島すべて... 2006.02.24 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-3 二年前の即位の時、ガウリイは特に何も考えもなかった。 五聖家に生まれたからにはその可能性もあるし、小さい頃から言われ続けたことだったため、前王が亡くなって自分に、と言われても特に感情は沸かなかった。 彼が考えるのが得意でないのはゼルガディス... 2006.02.23 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-2 同盟を結ぶための会談は滞りなく終わった。 セラフィーナも臣下の者もライゼールのものになるより、問題のないエルメキアに名を連ねたほうがいいと思ったこと。 エルメキアは聖地であるゼフィーリアと繋がりができることを望んだため、互いに対等な立場で同... 2006.02.22 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-1 春先とはいえまだ寒い日が続く中、エルメキア王であるガウリイはゼフィーリア領を訪れた。 ここでまず説明をしておくが、エルメキアは十八の領地に分かれ、各領主がそれぞれまとめている。そのほかに貴族と呼ばれるもの、そして建国者の血を引いた十八の名家... 2006.02.21 lineage
lineage 序章 世界の成り立ち この世界を記した創世記には、天地創造に関しての記述がこう表現されている。 天地は赤の竜神スィーフィードと赤眼の魔王シャブラニグドゥの苛烈を極める戦いから生まれたという。 シャブラニグドゥの吐く灼熱が大地に熱を与え、スィーフィードがその灼熱を... 2006.02.20 lineage