昨夜はシエンに付き合ってほぼ寝ていなかった。
シエン――ミオさんの前ではアスル・アズールと呼んだほうがいいのか。間違ってシエンと呼んだ日には、ミオさんから思い切りツッコミが入りそうで怖い。
気をつけなければ――そう思っているのに、なぜかミオさんは今日になって私の仕事を手伝うと言う。
出来ればここで大人しくしていて欲しい、というのが本音だった。
***
王の前でミオさんが大人しかったのにホッとしつつ、けれど、内容が内容なので自室へと戻ると疲れが一気に出た。
そんな自分にミオさんが気を遣ってお茶を淹れてくれる。こういう時は女性らしい気遣いが見える。
――と思ったのも束の間、信じられないほどの想像力を次から次へと披露してくれた。
まさかシエンがラ・ノーチェ国王その人だと、次の日に気づかれるとは思っていなかった。
もちろん彼女もその考えを全部信じていたわけではないようで、私の反応を見て意外そうな表情をした。
本当に当たっていたのか――そんな顔。
そして。
「もしかして――ラ・ノーチェ国王は紛れもない変人で、その変人さ加減から、女として規格外になるだろう私が面白そうだと思ったから――って感じ?」
女の第六感とでも言うのだろうか、本当に彼女の直感はすごい。
でも脱力しながら「……だから、何で分かるんですか」と質問すると、彼女はアイツが考えそうなことだ、と答える。
確かに二人は思考回路が似ているというか……私に対しての悪戯(?)も同じようなことをするし。
と、二人を比べていたのだけれど、ミオさんが女だと言って回るといって現実へと戻る。
……なんか、昨日はシエンに、今日はミオさんに振り回されてる。
やはり二人は同じような思考の持ち主だ。
とはいえ、ミオさんはミオさんなりにこの世界のことも考えているようで――還るというのが一番の前提らしいけれど――彼女の考えに賛同できる。
それにシエンの言うとおりにするより、ミオさんの言うほうがラ・ノーチェ側に力を付けなくていいわけで――八割方、ミオさんのほうに傾いていた。
「まあ、それは私も雲を掴むようではっきりとしてないけど――とりあえず、私はアスル・アズール対策かな。あっちがどう動くか分からないから、出来ればこれ以上、私が女であることを認めさせたくないというか……」
ん? なんかどこかで聞いたような台詞。
『ミオに自覚を――なんだが、それが一番大変そうなんだよなぁ。俺も今回ばかりはあまり自信がない。あの鈍感娘相手ではな。お前が来る前に少し話をそういう話をしたが、全く話にならん』
ああ、そうか。シエンの昨夜の台詞に似ているのだ。
二人とも似たような考えをしているのに、その似たような人物を相手にするのが一番厄介だという。
これもまた変わった話だ、と思う。
これから先、二人はどうなっていくのか。
予言どおりなら二人は一緒になるはずなのに、お互い難解な相手だと思っている。
少しは……そう、少しは楽しんでいいだろうか。
二人の間に立って大変なめにあうだろうことは目に見えている。
だから、二人の成り行きを少しばかり面白がって見物させてもらうくらい、許してもらうことにしよう。