その3 秘書の帰宅。

J.F.カンパニーの秘書であるリナの帰りは遅い。
または精神的に疲れて帰ってきていることが多い。
今日もコンビニで簡単に弁当を買いつつ、現在住んでいるワンルームマンションへと戻った。

「ただいまー。って、言ってもしょうがないんだけどね」

つい癖でただいまと言ってしまうリナ。
本来なら一人暮らしの彼女の家には誰もいないはずだが…


奥のほうから出てきたのは、J.F.カンパニー新商品、生きた癒し人形『くらげん』
試作品などは処分されるのが気の毒だと思って、つい引き取ってしまったのだが、試作品は手乗りサイズよりどうしても大きくなってしまうようだ。
少し小さめの『くらげん』から、子どもサイズの『くらげん』がまとめてリナに向かって走ってくる。

「ぎゃーっ!! こいつら忘れてたーーっ!!」

リナは慌てました。けれど、くらげんはとてもリナに懐いています。
危害を加える気はまったくありません。
そして――


「んー…これはこれで確かに癒されるわねえ」

くらげといえど、水の中にいるわけではないのと、人形ということで、『くらげん』の肌触りは滑らかで手に吸いついて気持ちいい。
つい、ご飯を食べるのも忘れて、一番大きな『くらげん』を抱きしめた。

「確かに『癒し』ってキャッチフレーズは間違ってないわねえ。んー、気持ちいい」


そうして浸っていると、足のほうでなんか声が聞こえました。
声は「りなー、りなー」と呟いています。

「んん!?」

『くらげん』はしゃべりません。
どうしてそんな声が聞こえるのか、リナは不思議に思いました。
そして、声のする方向を見て…


「ぬぉおおおおおぉぉっっ!?」

なんと『くらげん』だけでなく、『くらげ社長』まで懐いていましたとさ。


……って、どこから入ったんでしょうね。>ガウリイさん

 

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