NOVEL

二人の花嫁

二人の花嫁 1

あたし、|佐藤《サトウ》マリアは、友だちのマリ――|佐東《さとう》まりあと二人で異世界に飛ばされた。 いや違う。呼ばれたほうが正しいみたい。 ライトノベルなどで見る『異世界召喚』という言葉が浮かぶ。そりゃそうだ。あたしたちの周りには魔法陣ら...
baby's-breath

第08話 影響力(11)

ヴァレンティーネは一瞬きょとんとした表情をし、そして次は満面の笑みを浮かべる。「ヴ、ヴァールさん?」「やっぱりユウカで良かった」「え?」「実はね、ユウカを選んだのは、僕の代わりをして欲しいからって理由じゃなかったんだ」「…………はい?」 ち...
baby's-breath

第08話 影響力(10)

今まで自分はきちんとベルディータに向かい合っていなかった。 それなのに、相手の気持ちだけを確認しようとしていた自分を振り返って、ものすごく卑怯だと思えた。 いつの間にかに自分の保身のことばかり考えて、自分本位のずるい考え方になっていた、と。...
baby's-breath

第08話 影響力(9)

ずっと隠していた自分の気持ち。 誰かに話したかったけれど、こんな気持ちは誰にも言えないと思っていた。 優花は手をぎゅっと握り締めて、もう一度自分の思いを口にした。「ベルさんのことでいろいろ考えると、どうしても『怖い』って思うのが最後に来ちゃ...
baby's-breath

第08話 影響力(8)

つくづく世界にはいろいろ不思議なことが溢れているものだ、ということを優花は半年前に知ることになった。 半年前はごく普通の女子高生だったのに、今現在そんなものは陰も形もない。 いきなり異世界に呼ばれ、神様を押し付けられた。 とりあえず神様なん...
baby's-breath

第08話 影響力(7)

気づいた時には魔物とベルディータたちの間に立っていた。 手を広げ、周囲には魔物を守るかのように映ったことだろう。 けれど、そんなことには気づかずに、いきなり胸に衝撃を食らう。その後襲うのは激しい痛み。出血するほどの傷は服をあっという間に赤い...
baby's-breath

第08話 影響力(6)

クロクスに言わせると、優花は他の人と違って魔物を生み出したエリナを偏見の目で見てないと言う。 それならベルディータも同じだろうと思ったので聞いてみた。 クロクスの答えはベルディータの持つ雰囲気が苦手とのこと。 ベルディータは厳密には人じゃな...
baby's-breath

第08話 影響力(5)

優花にとって心臓に悪い朝食を終えた後は、ベルディータと別行動になった。 ここぞとばかりに村長がベルディータを頼りにして、あれこれ相談を始めた。もちろん断ることは出来ないので、ベルディータは仕方なくそれに付き合う。 優花も聞いたほうがいいのか...
baby's-breath

第08話 影響力(4)

夕食後もそのまま談笑を続け、ある程度遅くなってから二人は部屋に戻ることになった。 小さな村では毎日お風呂は無理らしく、もらった桶一杯のお湯でそれぞれ体を清めた後、二人は借りた部屋の扉を閉めた。「はー、なんか慌しい一日だったね」「まあ、こんな...
baby's-breath

第08話 影響力(3)

初めて直面する魔物に対する人々の恐怖。 優花はベルディータの言うとおり、魔物に関して見る目は難しい問題なんだと実感した。「結構……奥が深い問題だったんだね」「ああ。まあ、ユウカはそういった所を見てないからな」「うん。今になってやっと魔物に対...
baby's-breath

第08話 影響力(2)

夕食にはまだ間があるので、二人は部屋から出て村の中を散策を始める。 村の中は至って普通で特に問題はないように見えたが、どこか不安な雰囲気が優花には伝わってきた。「最近、魔物の被害でもあったのかな?」「さあな。未だに村全体がピリピリしているよ...
baby's-breath

第08話 影響力(1)

早いものでベルディータと旅を始めてもう三ヶ月近くなっていた。三ヶ月と言っても、この世界では一年が十三の月に分かれている。優花が元いた世界のちょうど月齢と同じ二十八日が一月なる。初春の一の月から十三の月までで、一の月は優花の感覚からすると二月...
baby's-breath

第07話 はじめての町(5)

ヘレナは驚いた顔をしながら呟いた。「本当に人は見かけによらないわね。でもそうなると本当に師弟関係なのかしら?」「どういう意味ですか」「だって十七……なんでしょう? なら、あの人は弟子というより、伴侶にって考えても可笑しくない年じゃない」「は...
baby's-breath

第07話 はじめての町(4)

疲れる食事を終えたあと、二人は町に出た。 優花はあまり世界のことを知らないため、町の中を歩いてベルディータに説明してもらう。大体どこの町でもあるのは役場、治療院、学校など。優花が思っていたよりしっかりしているようだった。 あちこち見ながら、...
baby's-breath

第07話 はじめての町(3)

二人は宿の手続きをすると、先に食事をとることにした。すでにちらほらと食堂には客がいたが、もう少しすると本格的に混むらしい。 人の少ないうちに食事にしようということになり、窓際の日当たりのいい席に座ってメニューに目を通す。けれど優花には名前だ...
baby's-breath

第07話 はじめての町(2)

町の入口には関所がある。 これも世の中が荒廃して、盗賊だの魔物が増えた結果らしい。ある程度の規模の町だと、城壁で囲んで守るのだとベルディータは説明する。「そうなんだ。そういえばわたしたち中に入れるの?」「大丈夫だ。精霊術士は術士になった時に...
baby's-breath

第07話 はじめての町(1)

宮から一番近い町は、トゥーレという名の町だ。 トゥーレと宮を繋ぐ道の左右には森が広がっている。その中にも魔物がいそうだったが、優花はこの世界の人たちがどんな風に生活しているのか知りたかったため、森の中を歩くのはやめた。 町へと向かう道を二人...
baby's-breath

第06話 旅立ち(4)

『魔物を殺さないで欲しい』 そう言ったファーディナンドの真意を、そして、『消す』と『殺す』の違いを考えて、優花は術式のことを思い出した。「えっと……『消す』なら術式ごと消せるけど、何か別の方法で魔物を『殺した』場合、術式が変わっちゃうんです...
baby's-breath

第06話 旅立ち(3)

用意されていた服はベルディータの女性版のような感じだった。 ハイネックの柔らかい素材の上着に、スパッツのような細身のパンツ。靴は足首くらいまでの長さだったが、ブーツに入るくらいの大きさ。 それらを着てから、ワンピースのような貫頭衣を上から着...
baby's-breath

第06話 旅立ち(2)

優花が笑みを浮かべている間も、ファーディナンドは旅に関しての説明をしていく。 けれど、その説明の半分くらいは優花の中を素通りしていた。おかげでファーディナンドはため息を一つつく。「きちんと聞いていますか?」「え? えっと……なんでしたっけ?...
baby's-breath

第06話 旅立ち(1)

神殿の地下にいる優花には朝が来たのが分からない。それに遅くまで話をしていたせいか、いつもの時間になってもまだ眠り続けていた。 が、あまり遅くなると、ファーディナンドが怒りそうだと判断したベルディータに起こされる。「そろそろ起きたほうがいいぞ...
ラ・ペルラ

036 二人の乙女(アスル・アズール)

~アスル・アズール~『あ、アスル・アズール……?』『どうした?』『いや、見たことない顔してるから……一体、何があったのかと……』 先程のやり取りを思い出してクスリと笑う。 本当に面白い。 異世界から来た十一代目の乙女――ミオ。 乙女と思われ...
ラ・ペルラ

035 変化

ふう、とため息が漏れる。 ここに来て自分がしてきたことに対する、自嘲故に。 ――なんて、ちょっと偉そうに言ってみても、やってきたことは変わらない。正直、目が覚める(という感じ?)と、今までしてきたことの数々が、穴があったら――いや、穴を掘っ...
baby's-breath

第05話 夜明け前(2)

『いや、特に何者ってほどのものじゃないと思うよ。彼女も言っていたでしょ?』「確かにそうだが……魔物を消すなど、何かしら力を持っていそうではないか」 何もわからずに戸惑う――先ほどまでの優花の心境はこういうものだったのだろうか。 思わずそう考...