女神の愛し子

女神の愛し子

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お母さんが帰ってきて、晩ご飯を食べて、お姉ちゃんとテレビを見た後、わたしはお風呂に入って、今は湯船に浸かっていた。「『女神の愛し子』とは、巡る魂の中で、女神が惹かれた魂に、女神が印を付けるんだ。リーゼロッテの時には、胸にその印があった」 遥...
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遥斗さんはあれ以上、昔の話をしてくれなかった。『人1人の人生――良いことも悪いこともある。それに、1日で語れることでもないんだ』 この言葉が、わたしの頭に残っていて消えない。何歳まで生きたのか分からないけど、あの場で語ったものは短すぎる。何...
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彼女――梨世と2人で話すことができただけでも、嬉しいのに、つい名前で呼び合うようにして浮かれてしまい、更に梨世の手を取って、昔のように口付けてしまった。 ヤバい。やり過ぎた、と思ったけれど、真っ赤になった梨世を見て、「ああ、やっぱり彼女だ」...
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お姉ちゃんと別れて、近江さんと2人で落ち着いて話ができる特別教室へ入った。勝手に使っていいのかな? と思っていると、近江さんから、部室として使ってなければ大丈夫とのこと。教室に入ってから、適当なところで椅子に座った。「あの、お姉ちゃんのこと...
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9(莉里)

昔、婚約者だった――その言葉は衝撃的だった。2人には何かあるとは思ってたけど、まさか、前世で婚約者だったなんて。 ……正直、あの男の一方的な想いじゃないのかしら? なんて、思ったりもしたんだけど――そんな、簡単ものじゃなかった。 彼氏も居な...
女神の愛し子

わたしが感情的に訊ねると、お姉ちゃんは顔をしかめて口籠った。……って、本当に何を話していたの⁉ 余計気になるよっ。「俺が君のお姉さんの後ろ姿を見て、君と間違えたんだ」「わたし、と?」「ああ」 少しバツが悪そうな顔をしながら、お姉ちゃんに変わ...
女神の愛し子

放課後になって、友達と少し会話をした後、いつも通りに図書室に向かった。 いつもは、ある程度図書室で過ごして、読みきれなかったらその本を借りて行くんだけど、昨日の出来事のせいで本を借りることを忘れていた。まあ、昨日は次を探すこともできなかった...
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6(梨里)

目の前の男の言うことが信じられなかった。 前世? なにそれ。でも、この男が言うことが本当なら、この男と妹が前世で恋人同士(だったかもしれない)ってこと? 私に前世の記憶なんてないけど、前世の記憶を持つ人がいるという話は聞いたことがある。それ...
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5(遥斗)

教室を出たら、彼女にそっくりな後ろ姿の女子生徒を見つけた。思わず追って、肩に手をかけてみるものの、振り返った顔は、彼女と似ているけど彼女ではなくて。どうしようと戸惑っていると、張り付けた笑みで「説明しろ」と言われてしまった。 仕方なく、別棟...
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4(莉里)

私の名前は鈴木《すずき》|梨里《りり》。高校2年生で、年子の妹、梨世との2人姉妹。両親は共働きで、多分、普通の家庭なんだと思う。 母もフルタイムで働いているので、家事は妹と2人でしている。母に言わせると、「2人とも、いつでもお嫁に出せるわ〜...
女神の愛し子

体がふわふわと浮いているような感じが抜けなくて、覚束ない足取りで家に帰った。 図書室であった事が現実味がなくて、でも、抱きしめられた時の相手の鼓動の速さとか、温かさとか、そういったのは夢じゃなくて現実で。でも、それを認識するのに、頭がキャパ...
女神の愛し子

トクトクと通常より早い鼓動が相手の胸から聞こえる。そのせいか、外の騒がしさが全然聞こえない気がする。 えーと、図書室で本を読んでいたのに、これは夢なのかな? 思わず思考を放棄しそうになるけど、相手の抱きしめる力強さとか、触れている面の熱さと...
女神の愛し子

わたしは放課後、図書室で本を読むのが日課だった。 校庭の賑やかさとは違い、静かな雰囲気と本の紙の香りがするこの空間が何よりも落ち着ける。今は本棚から面白そうな本を一冊取り出し、集中して一気に読み終わったばかりだった。(はー、面白かった!) ...