第1話 人生、一寸先は闇。

 人生、一寸先は闇――それが十六歳の誕生日にあたしが悟ったことだった。

 あたしにとって一番古い記憶は、お腹を空かせてどこかの家の壁にもたれかかって座り込んでいるもの。
 ああ、このまま死ぬんだ、って小さいながらに思った。だって、その時四日以上何も口にしてなかったから。親の顔も思い出せないほどだから、かなり小さい頃ってことだけは確か。
 だからあたしは正確な自分の年を知らない。仕方なく拾ってくれた養い親が出逢ったその日を誕生日に、そして年は三歳ということにしたらしい。
 そして今日、養い親に育て(?)られて十六歳になった。
 なんでハテナが付くかってのは、養い親が不在の時が多いのと普通の親っぽくないんで、ちゃんと育ててもらったって感じがしないのから。うん。食べさせてもらったというのはあるけど……なんていうか、世間でいう“親”とはちょっと違う気がする。

「おい、琴音ことね

 つらつら考え事をしてたら本人から声をかけられた。
 こんな時間に出てくるなんて珍しい。

「あれ、秋月しゅうげつ? こんな時間にどうしたの」

 声を掛けたのは秋月――あたしを拾ってくれた人。長い金髪、目はそれよりも少し濃い色。どちらかというと白人っぽいのに、何故か日本名という変な人。
 作家でもあるから、もしかしたら“秋月”はペンネームなのかもしれない。その辺は尋ねたことがないから良く分からない。

 街から外れた大きな家に一人で住んでいて、まるで世捨て人のような……訂正、あれは世を捨ててはいない。逆に俗世の垢にまみれてる。
 でもって、あたしを拾った時から十三年間、全然姿かたちが変わってないという謎の人でもある。
 ホラー映画にはまったときは、年を取らない秋月を疑ったこともあった。でも秋月は“変”だけど、それだけ。近くで人が変死したとか、そう言った話を聞かないから、“秋月バケモノ説”はいつの間にかなくなっていた。
 結論で言えば、美形だけど変な人物である。
 いや違う。変な人だけど美形だから見てるだけなら問題ない、という人。
 ……あれ? どちらの評価も微妙だ。ううむ。とりあえずそんな感じの人。

「薔薇の手入れは終わったのか?」
「あ、うん。だいたいね」

 右手に剪定バサミ、左手に切り取った枝を持ちながら立ち上がって答えた。

「今日は何を?」
「黒点病の所があるからその葉っぱを取ってるの。そこ、山になってるでしょ。あと念のためダコニールをちょっと」

 薔薇のお手入れは思ったよりも結構大変。
 でも拾ってもらった時の条件に、薔薇園の手入れをすることと、毎朝いつも秋月の部屋に薔薇を届けるという妙な約束がある。
 秋月のおかげで学校にも行くことができたから、薔薇園の手入れは欠かさず頑張ってる。おかげでガーデニングの腕はかなりだと思う。薔薇限定だけど。
 寂しいのは、薔薇の手入れのために部活が出来ないこと。
 それだけの時間を費やさなければならないほど無駄に広い庭は、ほぼ薔薇で埋め尽くされている。毎日少しずつ手入れしてるけど、他に人がいないからいつまで経っても終わらないように思える。

「ほー」
「ちゃんとしておかないと秋月がうるさいからね」
「当たり前だ。俺の――」
「『貴重な食糧だからな』。もう聞き飽きたよ」
「分かっているなら綺麗にしておけよ」

 先ほど言ったように秋月は変な人だ。その最たるのが“薔薇は大事な食糧”と真顔で言うこと。
 確かに秋月がご飯を食べてるのを見るのは少ないけど、いくらなんでも薔薇がごはんなんて信じられるわけないじゃないか。
 でも、大人になったら薔薇だけでいいんだ――なんて言って、あたしがごはん食べるのを見てるだけだったから、子供の頃はちょっと信じちゃったのは内緒だ。
 でも、実際はあたしがご飯の支度をすれば一緒に食べるから、ただ単に、薔薇をこよなく愛しているだけかもしれない。(ついでに言うなら、秋月の部屋に薔薇は飾るけど片付けたことはないので、それが余計に不思議に思う要因だと思う)

「なーにが食糧だか。薔薇持ってカッコつけたって、秋月の性格知ってんだから騙されるかっての。んで、今度出かけるのはいつ?」
「は?」
「薔薇がご飯だ――なんて冗談じゃなくて、キレイなお姉さんを食べに行く日のこと」

 実はこれは本人が言ったこと。男だから時には必要なんだーって。
 初めて聞いたのは中学に入ってすぐくらい。その頃だと、あたしも一人の夜が寂しいって泣くほど子供じゃない。どちらかというと、そういう話を聞いてショックのほうが強かった。
 そりゃ意味も理由も分かるけど、思春期になったばかりの子に言うんじゃないっての。初めて理由を聞いた時には、開いた口が塞がらなかった。一種のカルチャーショックみたいな感じだよ。
 秋月は変だけど見た目は綺麗な人だし、街に行けば若いおねーさんが放っておかないのは分かるよ? でもはっきり言われちゃうと、微妙な年頃なんで初めは変な目で見ちゃったよ。
 最近は自分に火の粉が飛んで来ないならどっちでもいい、というところまで感覚は麻痺しちゃったけど。慣れって怖いよね、ホント。

「まったく……、この口の悪さはどこから来るのかなぁ?」

 自分の置かれた環境にしみじみしてたら、秋月が頬を引っ張りながら文句を言う。

「い、いひゃいっれば」

 痛い。絶対手加減なしでやってる。恨めしげに睨みつけながら、

「んもう、口の悪さは秋月のせいでしょーが!」
「ほほう、ならお前のしゃべり方は俺から学んだと言いたいのかな? ああ?」
「言いたいんじゃなくて言ってるの! どう考えても秋月相手にしてたら、上品なしゃべり方なんて覚えないってば!」
「本っ当に言いたい放題だよな。育て方間違ったかぁ?」

 嫌みの応酬のためにもう一度頬を引っ張られる。
 痛いけど、黙ったままというのはあたしの性分じゃない。聞き取れないような発音で、それでも秋月に返す。

「しゅーふぇつにそらてれもらっはほぼえはらいもん(秋月に育ててもらった覚えはないもん)」

 このヤロ……、本当に薔薇が食いモンだってなら、今度は虫付きのやつを部屋に置いてやろうか。そうしたら少しは驚くはずだ。うけけ、ザマアミロってんだ。
 あたしにだって拾ってもらった恩ってものがあるから、約束は守らなきゃ、って思う。だから、薔薇は持っていくけど、その薔薇に細工してやる。
 こんな感じだから、恩っていっても、きっとあたしの心を覗いても顕微鏡で見なきゃ分からないほど小さいに違いないけど。

「本当にこんなに立派に育ててやったってのに、なんて薄情なやつなんだ。俺は悲しい……」
「ぜんっぜん、悲しんでるようには見えないから」
「失礼なやつだな。こーんなにチビでガリガリだったお前を、これだけ大きくして肉付きよくしてやったってのに」

 ぐいっと引き寄せられて、秋月と体が密着する。左手でお腹を押さえて、右手で人の、人の胸を掴んでる。

「うぎゃあっ! 何すんだー!?」

 このセクハラ男おおおぉっ!!
 少し前までそんなそぶりを見せなかったのに、最近になって態度が変わってきたのだ。うう、ひしひしと身の危険を感じるよー……。
 秋月のアホが本当に世捨て人ならこんな風に思わないんだけどなぁ。

「もう少し色気のある声にして欲しいな。それこそ、お前がよく言う“きれいなおねーさん”たちのような」
「そんなの知らないよっ! ってか放せ。これ以上やるなら、薔薇に消毒薬かけて持っててやる! いや、直接掛けてやる!」

 何に使うか知らないけど、消毒薬は結構臭いぞ。おお、いっそのこと除草剤でもいいな。こうなったら全部混ぜてやろうか。
 この状態から逃れるためなら何でもやってやる。これでもあたしはか弱い女の子なんだ。なりふり構っていられるかー!

「うーん……それは困るなぁ」
「なら放せ」
「でももう毎日薔薇はいらないし」
「は?」
「お前、今日で十六だろう?」
「あー……うん、一応」

 そう、今日で拾ってもらってきっちり十三年。
 拾ってもらった日を誕生日にしたんだから、今日あたしは十六歳ということになる。

「少し早いかと思っていたが、いいモン食わせてたせいかな。思ったより育ったな」
「……は? 育ったってそりゃ……ちょっと前までバリバリ成長期だったし」

 食事は自分で作るんだけど、材料に糸目をつけないので、食生活はかなり豊かだったもの。
 美味しいものを食べていればそれなりに育つわけで。

「そういう意味じゃない。まあ、表に出すには少し“教育”しないといけないが」
「だからなんだって言うの!?」

 あー、もうっ。核心に触れずにブチブチ余計なことを言って……。だいたい義務教育は終わってるっての。まだ高校も大学もあるにはあるけどさ。
 ……あ、そうか。十六歳といえば、義務教育は終了している年だ。孤児院でも面倒を見てくれるのってそれくらいまでだっけ。
 ってことは、今日であたしは独り立ちしなければいけないのかな。

「もしかして、あたしってお払い箱? 薔薇もいらないって言うし、それならそれでもいいけど、街で仕事を探して来るまでもうちょっと待ってほしいんだけど」
「何を言ってる?」
「だから、もう面倒みるのをやめるっていう話じゃないの? 一応義務教育は終了してるわけだし」

 秋月の気まぐれは十三年間の付き合いで良く分かってる。
 というか、十三年間も良く持ったほうだと思う。秋月も一度拾ったから、と我慢したのだろうか。
 いやいや、秋月だけでなく、あたしも我慢強かった……と思う。過去を振り返れば分かれば、ね。そういった記憶が……ざっと思い出すだけでもひと山は軽くいっちゃうくらいあるのよ、うん。
 どちらにしろ、孤児にしては高校まで行かせてもらっているのでかなり贅沢だ。まあ、行き始めたばかりで、この流れだと辞めないといけないみたいなのが残念だけど。

「お前は俺がお前を放り出すような冷たい男に見えるのか?」
「見える。というか冷たいでしょ、基本的に。どうでもいいのは本当にどうでもいい扱いしかしないもん」
「なら、俺がお前のことをどうでもいいものだと思ってるというのか?」

 実に心外だというような顔をする秋月。
 いや、あたしのほうが意外だから。ってか、秋月が何かに執着するというのは見たことないんだもん。拾われてすぐから、遊びに行くって言って数日放っておかれるのはざらだったし。
 だいたい可愛がられているというより、からかわれているって感じだよ? 『誠心誠意』って言葉と対極にいるような人だよ?

「……ったく」
「なに?」
「本当のことを言ったらお前は暴れそうだな。少し早いが説明する前に大人しくなってもらっておうかなぁ」
「は!?」

 何を言いたい(したい)のかさっぱり分からん。秋月の訳の分らなさはいつものことだけど、今日は輪をかけて酷いような気がする。
 いい加減答えの出ない言葉遊びに飽きたから、薔薇の手入れに戻るため秋月から離れようとした。
 なのに秋月は離さない。

「……用がないなら放してくれない? 薔薇の手入れに戻りたいんだけど」
「駄目。俺の用がまだ終わってないから」
「まだ不毛な言葉遊びを続けろ、とでも言うわけ。もしかしてスランプにでもなったの?」
「いや。今日のことを考えるとすこぶる調子が良かったよ」

 おーい、まだなぞなぞ遊びを続ける気かい。あたしは、さっさと不毛なことは終わりにしたいんだけど。
 それにこう……なんていうの、秋月にくっ付かれるのってなんか落ち着かない。子供の頃は一人じゃ寂しいとか、抱っこして欲しいって甘えたみたいだけど。もう、今更なんだよね。
 昔を懐かしんでいたので、秋月が動いたのに気づくのが遅れる。気づくと目の前は金色一色になり、その後首筋に鋭い何かが突き刺さる痛みに声が漏れた。

「しゅうげ……っ!?」

 痛い痛い痛い!
 何これ何これ何これええええぇっ!?

 ――き、きぅけつ……きぃ!?

 そんな馬鹿な。こんなの、まるで秋月が吸血鬼みたいじゃないか――頭の中に浮かぶ言葉。
 けど、すぐさまそれを否定する。
 確かにご飯を食べているところをあまり見ないし、夜ばかり動いて不健康そうだなーって思ったけど。でも昼間だって平気で出歩いてるし、今だって夕日だけどまだ明るいし。
 ぜんぜん吸血鬼だなんて想像できるものなんかなかったのに。

「ぃたあっ……!!」

 でも喉に食い込む鋭いものは現実で、でもって痛くて、それになんか気が遠くなってくる。

「悪いな。とっくに決めてたことだから」
「しゅ、げ……」
「とりあえず、ご馳走さん♪」

 上から全然悪く思ってないような声が聞こえる。
 たぶん見ればぜったい笑ってる。悪人のような顔で。だけど見れない。視界が揺れて気持ち悪い。あれだ、貧血。
 秋月め、本当に吸血鬼だったとしても貧血になるまで一気に吸うなってば。なけなしの恩がある以上、血が欲しいなら言えば、少しだけなら吸わせてやったのに。いくらなんでも、あたし、そこまで恩知らずじゃないよ。
 必死に秋月にしがみ付こうとするけど、手が震えてしっかり掴めない。
 駄目だ、気が遠くなる……

 

  ***

 

 気を失ったわけじゃなかった。
 ただ、自分の体なのに自由に動かすことができない。声もどこか遠くで聞いているような可笑しな感じ。
 ゆらゆらと、秋月に抱かれて家の中に入る。
 ……なに、するんだろ?

「ウェン、来てるか」

 ウェン? 誰それ。
 そういえば、あたしって秋月の交友関係って全く知らないかも。不特定にお付き合いのある綺麗なお姉さんたちしか聞いたことがないような……。
 あたしってば十三年間一緒にいて秋月の何を見てたのかな――ぼんやりとそんなことを考えてた。
 ただ分かるのは、これからあたしにとって嫌なことが起こりそうなこと。
 だけどそれから逃げられそうにないってこと。

「来てるよ。秋月こそ予定より早いね。お姫様を抱っこしてさ」
「んー、コイツが変に気付きだしたからな」
「へえ、結構鋭い? でも、うん、なかなか可愛いね。いいなーいいなー」
「やらんぞ」
「はいはい。分かってるよ。君と争う気はありません。いくら長い人生に飽きてるからって、友人に殺されるってのも嫌だしねぇ」

 軽く手を上げて“降参”といった素振りを見せる秋月と同じくらいの年の男の人。
 この人なに言ってるの? 訳わからない。
 初めて見るウェンと呼ばれる人。秋月と同じような金色の髪で日本人じゃないよね。
 でも長い人生って……どう見ても二十代前半なんだけど……ああ、吸血鬼なら不老不死だっけ。……って、あたしってばなんか吸血鬼だって信じちゃってる。さすがに、あんなことされると納得してしちゃうよねぇ。
 あんなこと――そーいや、あたしは秋月にとって非常食か何かだったのかな。だとしたら十三年間も良く我慢して育ててたよね。非常食に手を出さなければならないほど、モテなかったわけじゃないだろうに。なんで今になってこんなことするわけ?

「しゅうげ……どう、い……いみ……?」
「あれ? お姫様は意識があるみたいだね」
「完全に意識を失うまではしてないからな。意識がないままじゃマズイだろ。一応、了承させなきゃならないし」
「なに、いって……」

 本当に何言ってんの? 秋月はいつも変だけど、今日は本当に変だよ。
 それなのに。

「へん、なのに……なんで、まじめな顔、して……」

 いつものように余裕綽々で笑っているのに、目はものすごく真剣なの? なんで? いつものように本心を見せない目をしてよ。そんな顔されたら、本気にしちゃうじゃないか。
 血を吸われたことも。
 秋月が吸血鬼かもしれないことも。
 これから起こる何かも。

「そりゃ、この日に真面目な顔をしなきゃいつするんだよ。俺の花嫁サン」

「…………は!?」

 花嫁って!?
 いうことを利かない体で、それでもものすごい間抜けな表情はできたと思う。だってそれだけ驚いたから。
 でも秋月はそんなのに全く気にしないで、あたしの頬に口づける。
 うわあああ……い、嫌だあああっ!!

「こらっ、そんなに嫌そうな顔をするんじゃない。俺がどれだけ待ったと思ってる」
「し、知るか! 勝手に人の未来を決めるなっ! あたしの人生設計では小さくてもちゃんと会社に勤めて、ごく普通のやさしい人と一緒になるってのが理想なんだ! こんなの道外れもいいとこだよ!!」

 思いっきり“普通”と“やさしい”を強調しててしまう。だってこれが秋月にないものだから。
 それにあたしがそう思うようになったのは、秋月のせいだ。いつの間にかに本当の家族は消えて、いるのは変わった秋月のみ。だから普通の人、普通の家族、そういったのを望むようになっていた。
 だって、ないものを欲しがるのは人の性分で仕方ないというか……。
 それにしても、体はまだ戻らないけど、口はかなり回るようになってきた。よし、あとは体を戻して逃げるだけだ。

「お前は男を見る目がないな。そんなのがいいわけないだろうが。すぐ飽きるぞ」
「いいか悪いかはあたしが決めるの!」
「残念でした。その前に俺のほうはとっくに決めてるんだよ」
「し、知らないっ! そんなの知らないいいっ!!」
「ま、無粋に騒ぐやつは置いといて、ウェン始めるぞ」
「りょーかい♪ 二人の夫婦漫才の間に準備は万端さ!」

 軽い口調のウェンとかいうヤツの声。
 夫婦漫才って言うなー!
 慌てて周囲を見回すと、床には変な文字がいくつも描かれている。これってよくいう魔法陣ってやつだろうか? 中央には椅子が置いてある。
 そのすぐ近くのテーブルには白いテーブルクロス。アンティークな燭台に、装飾が見事な短剣とか小物が置いてある。
 ウェンがその短剣を持つと、ろうそくの明かりに照らされて妖しく光る――その異様な光景におののく。
 秋月は魔法陣らしきものの中央にある椅子にあたしを下ろした。

「お前を仲間に加える。これは決定事項だ」

 秋月の目が光を帯びる。その目を見た途端、あたしの意思とは関係なく「…………はい」と、小さく肯定の言葉を返していた。
 その後も、感覚まで麻痺したのか、目の前に広がる惨状を見ても、逃げる気もなく――気づけば秋月の血を口の中に流し込まれた。血の味に思わず吐き出したくなるのに、何故か出来ずに無理矢理嚥下する。
 心の方が耐えきれなかったのか、飲みきる頃に意識を手放した。

 十六歳の誕生日――その日は、あたしが描いていた人生設計を百八十度転換させるものだった。
 時は二十一世紀、場所は日本。
 そんな所に吸血鬼がいるなんて思わなかったよ!
 しかも、そんなのに十三年間も養われていたなんて!
 しかもしかも、あたしをその仲間に入れようとしてるなんて!

 あたしの平凡な人生設計はどこへ行った!?

 

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