すでに今日は日も暮れて、宿に入り夕食を終えあてがわれた部屋でのんびりしている時だった。
アメリアがベッドの上に座ってあたしのほうを見て。
「ねえ、リナ」
「んー。なに、アメリア?」
「リナはどうしてガウリイさんと一緒に居るの?」
「はあ~~?」
アメリアのいきなりの質問であたしは目が点になった。
そんなあたしの様子をまったく意に介さずに、アメリアはベッドから降りてあたしのベッドの脇に来る。
そしてベッドの上でお宝の整理をしていたあたしにずずっと詰め寄った。
「えっと……」
「どうして?」
なんか異様な迫力があるんだけど……
「常々不思議に思ってたのよ! あのリナが、どうして脳みそクラゲなガウリイさんとずっと一緒にいられるのか! まあ、ガウリイさんが何も考えてないからリナの側にいられるんだってのもあるんだろうけど」
……ゴルラァ、ケンカ売ってんのかい!?
何気にさらりと酷いこと言わなかったか? あたしにもガウリイにも。
「アメリア~『炸弾陣』がいい? それとも『火炎球』?」
あたしは手のひらに光球を煌かせ、やや引きつった笑みを浮かべた。
「ひっ……リナ、落ち着いて! 短気は駄目よ!」
慌てて手を振ってあたしをなだめるアメリア。
だけど、いったい何が言いたいのよ?
「……ったく、何が言いたいのよ?」
そりゃあ、ガウリイとだって付き合いはもう長いほうだろう。
いつの間にか、高笑いする露出狂の女魔道士よりもずっと長い時間を過ごした。
「だーかーら。リナだって常々言ってるじゃない、ガウリイさんのこと。脳みそクラゲとか、ヒモとか……。それなのになんで一緒にいるのか気になったのよ」
アメリアが人差し指を突き立ててお得意のポーズをとりながら、更にあたしに詰め寄った。
「うーん。なんで……って……惰性?」
だってそう言うしかない。ガウリイはよもや空気のような存在で……いつの間にか一緒に居るのが当たり前になっちゃったんだもの。
別に別れて旅をする理由もないから、そのまま一緒にいるんだけど……
「じゃあ、言い方を変えるわね。リナの理想の男性像ってどんな人?」
「理想……ねぇ。そりゃあ、もちろん玉の輿に決まってるでしょ!!」
うむ。乙女のきぅきょくの理想よね。
「……じゃなくて、お金以外で……ってこと! たとえば背が高い人……とか」
「そーねー……確かに背は高い人がいいわね。それにやっぱり顔だっていいに越したことないし。ああ、性格はもちろん優しい人がいいわね。あ、でも自分がないのはダメよ。しっかりしてなきゃ。でもってあたしのやることに口を出さなくて、あたしについてこれる人! そうよ。それは最低限ね!」
「…………」
うみゅ。あたしくらいの美少女ならこれくらいの要求は当然よね。
「まあ、もっと言えばキリがないけど」
あたしはアメリアに肩をすくめて見せた。
「うーん……」
「何よ?」
あたしの答えを聞いてアメリアが腕を組んで考えるポーズをとる。
「アメリア?」
「分かったわ!」
なにやら考えこんで、答えが出たのかいきなり大声で叫んだ。
「何がよ?」
「いえ、やっぱりリナにはガウリイさんなんだなーって痛感しただけ」
「はい?」
一人合点がいったというような顔をしてにこやかになるアメリアに、あたしは意味が分からずハテナマークが乱舞した。
「だって、リナの理想って、まんまガウリイさんじゃない! だからやっぱり二人は一緒にいられるのね!」
あたしの理想のまんま……?
その言葉にしばし考えてみる。
そーいえば、容姿はいうに及ばず、盗賊いぢめに関しては文句をいうものの、それ以外はあたしのやることも多少無茶でも許してくれる。いや、更にフォローまでしてくれて……。
ぽふんっ…………ぷしゅう。
アメリアの言ったことを反芻して理解し始めると、あたしは急に顔が赤くなった後、途中で考える力が及ばなくなってショートした。
「………………ぁぅ。」
やだ……あたしってば全然ガウリイのこと意識してなかったけど、考えてみればあたしの理想に近いかも……。
いやあああっ、頬が熱いっ。
自覚してしまったら、急にドキドキして顔の熱が引かない。
「やっと分かった? リナ」
真っ赤になったあたしを見て、アメリアはにやにやしながらあたしにそう尋ねた。
あ……あたしってば気づかなかったけどガウリイが理想だったんだ……。
「……うーうーうー……」
結局さんざんアメリアにからかわれ、お返しとばかりに『炸弾陣』をお見舞いし、吹き飛ばしたのはお約束。
そして、ガウリイと顔を合わせてまた真っ赤になって、今度はガウリイも一緒に吹き飛ばしたのは、さらにお約束だろう。
これまた昔書いたのを再掲載。
リナの理想の男性って『王子様』を抜かせば、割とガウリイが当てはまる気がします。