くらげ社長と新米秘書の日常 01 「君は私を何だと思っている」「多少、無能かと」 リナ=インバース。 二十二歳。この春大学卒業。商社J.F.カンパニーに入社。 この年の新入社員の中では一番の有望株のため、彼女は入社早々に秘書課へと配属。 ――というのは表向きの話。 実際は秘書課に勤めていた社員が一人退社したため、新しい人... 2006.07.28 くらげ社長と新米秘書の日常
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-10 シルフィールは一晩最後にリナの言った言葉を反芻していた。『人は血筋や家柄のみで動かない』 その言葉はシルフィールの胸をまたしても射抜いた。 ここに来てから、人々に望まれているのは良く分かっている。でもそのことに胡坐をかいていなかっただろうか... 2006.07.26 lineage
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-9 シルフィールはエルメキア城に来てから、常に人に見られていた。でもそれは好意のものが多く、不快なものではない。 だから嬉しいものだったが、一つだけ気になるのは、もう一つの注目の的――ガウリイが自分を見るときに感じる感情だった。 同じ五聖家の者... 2006.07.20 lineage
お話 相棒関係迷走注意報 7 ――溜め込むのは良くないよ、リナ。 次に起きた時にはガウリイにちゃんと自分の気持ちを口にしてごらん。 ガウリイのこと好きなんだろ? ちゃんと言葉にしたら、ガウリイも喜ぶよ。 ふわふわとその言葉を反芻しつつ、リナの意識は覚醒した。 半分ぼ... 2006.07.17 お話
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-8 アメリアにとって、リナは初めてできた親友だった。 王女として育ってきた彼女は、皆に愛されてはいた。けれど、同じ年の子どもたちにはどこか一歩下がって接していた。王女だから、それが理由だろう。 第一王女である姉がいた時は良かったが、その姉がふら... 2006.07.15 lineage
お話 相棒関係迷走注意報 6 アルベルトは久しぶりに楽しかった。 だから楽しませてくれた少女に、ほんのちょびっとだけお礼をしてあげようと寛容になったのが悪かった。「ねぇ、本当に好きなだけ食べていいの?」「もちろん。臨時収入が入ったからね。確かに君がたくさん食べるのは知っ... 2006.07.15 お話
お話 相棒関係迷走注意報 5 天気は心を映す鏡なのか、今日の空はリナの複雑な心と同じで曇天だった。厚い雲が空を覆い、いつ雨が降ってもおかしくない微妙な空模様。 部屋の窓から空を眺めながら、リナは今日はどうしようかと考えた。本当ならゼフィーリアに向けて旅立つはずだったが、... 2006.06.14 お話
お話 相棒関係迷走注意報 4 今日、ガウリイとリナが泊まる部屋は三階の一番奥から二つ取った。 ガウリイは手前の部屋だったが、途中で行き過ぎたと思い、後ろを振り返ろうとしたとき、そこにリナの部屋の扉が目に入った。気がつくと夜中だというのにリナの部屋の扉を叩いていた。 たぶ... 2006.06.10 お話
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-7 こうしてミリーナとの小さなお茶会のあと、今度はガウリイと小さなお茶会をするのがリナの日課になった。 リナは食べることが好きなので、二度のお茶会に関しては問題なく、ミリーナともガウリイとも楽しい時間を過ごした。 ガウリイは最初に言ったように、... 2006.06.07 lineage
お話 相棒関係迷走注意報 3 ざわざわとざわめく薄暗い部屋。 酒が入った勢いで、店の女性に手を出してトレイで殴られる客。それに、酔いつぶれて酒の入ったコップを握り締めたまたテーブルに突っ伏している客がいる。 ここはリナたちが泊まる宿とは違う、町の酒場のうちの一つだった。... 2006.06.04 お話
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-6 いつの間にか、恒例となった温室でのミリーナとの小さなお茶会。 昼下がりのこのひと時は、リナにとってとても楽しい時間だったし、ミリーナから聞くこの国の話は、リナのためになった。 五聖家のこと、国民の暮らし、上流階級に位置するミリーナはいろんな... 2006.06.02 lineage
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-5 すでに入口から射し込む光は赤みを帯びていて、時が夕方だと告げていた。 薄暗くなった厩舎に訪れる者はいない。その中でエルメキア王とその側近に仕えるものが抱き合っているなど誰も気づかない。 けれどリナにしてみると、いつ誰がガウリイを探しに来るか... 2006.05.30 lineage
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-4 それは表面上はにこやかに明るい口調で答えた。 けれど、その口調とは裏腹に、怪しい雰囲気が彼から滲み出ていた。「城にいる以上、一般市民というわけではないでしょう?」「ええ、僕は|神官《プリースト》ですので。たまたま王城に出向いてみれば、王様が... 2006.05.27 lineage
お話 相棒関係迷走注意報 2 食事が一段落し、テーブルに空になった皿が山積みにされた中で、リナはガウリイに一言「知り合い?」と尋ねた。 壁のほうでこちらに視線を向ける男二人の存在は、リナもちゃんと気づいていた。 美女と間違えそうな若い青年と、しっかりとした体躯の彼よりも... 2006.05.25 お話
お話 相棒関係迷走注意報 1 日が暮れて夜になると食堂は一番繁盛する時になる。旅なれた一組の男女が立ち寄った店も例に漏れず繁盛していた。 二人はとりあえず、とメニューにある料理を全部注文し、来るたびにものすごいスピードで平らげて、テーブルの端に皿の山を作った。周りに座っ... 2006.05.21 お話
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-3 仲良くなったミリーナと、いつものように温室でおやつをする。香茶の香りに和みながら、王室御用達の料理人が作ったお菓子を摘む。 すでに日課の一つになったこのお茶は、リナにとって何も考えずにのんびりできるときだった。 けれど、それは温室の外から聞... 2006.05.19 lineage
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-2 シルフィールがエルメキア城に滞在するようになってから、一週間が経とうとしていた。 彼女は五聖家であるランドールに養女として入った身で、その姿は清楚で美しく、また女性らしい細かな心遣いなどを見せる。 城の者にもこれならガウリイの正妃として相応... 2006.05.17 lineage
lineage 第2章 自覚~思いが通う瞬間-1 タタタと人のいない廊下を足早に歩いた。リナは少しでもいいから早く執務室から遠ざかりたかった。 本当は用などない。朝、ゼルガディスに言われた仕事は、今日の午後はシルフィールの相手をすることだ。 でも、あそこにいるのはなぜか苦痛に感じて、本当に... 2006.05.07 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-15 ガウリイにとってゼルガディスの言葉は衝撃的だった。 どこかで望みはあるだろうと思っていたのに、そんなものは欠片もなかった。 そして、自分の思いを通せばリナが傷つくだけだと知って、体が凍りついた。「そんな……それじゃ、どうしたら……」 震える... 2006.05.05 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-14 「その前に、リナに関することが分かった」 ガウリイはそれを聞いて、酒瓶に手を伸ばした手が止まる。一呼吸置いてから、ガウリイは短く「話してくれ」と返した。 ゼルガディスは頷いて、羊皮紙を見つめながら淡々とした口調で語りだした。「まず結論として... 2006.04.21 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-13 夕食は新たなメンバーが加わったため、親しい者――ガウリイ、ルーク、ゼルガディス、そしてリナの四人での食事になった。 しかし給仕する者がいるため、リナはガウリイに対して変な口の利き方をしないようにと心がけた。途中でリナがガウリイに質問されて、... 2006.04.17 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-12 どうしてこんなことになったんだろう――リナは今の自分の状況を考えていた。 いつもの自分なら魔法を使って力づくでも逃げることはできたし、今もガウリイは強い力で拘束しているわけじゃない。けれどその腕を拒否する気になれなくて、抵抗する気が起きなか... 2006.04.16 lineage
lineage 第1章 出会い、そして、再会-11 リナはそのままガウリイに促されて歩いていく。城の中で、さらにガウリイに肩をつかまれた状態では、もう逃げることはできなかった。 その間、至るところから好奇心の目で見られて、リナは連れてこられたことを激しく後悔した。なんでこんなところまできてし... 2006.04.15 lineage
femme fatale +α.キス、すき、キス 窓から差し込んでくる日差しは目に痛いほど眩しかった。 いや、実際痛い。眠れず泣きはらした目には朝の日差しはきつかった。 ――結局、あたしは昔も今も、ガウリイにとって一番にはならなかった…… 昨日のことを思い出して、また目が熱くなってくる。 ... 2006.04.08 femme fatale