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第2章 自覚~思いが通う瞬間-14

リナはガウリイに詰め寄られて思わず口をぎゅっと引き結んだ。内心、ものすごく困っていた。 怪我をして倒れたのは覚えているが、次に目が覚めた時、どうしてガウリイが目の前に居るのか。 リナには自分の意識がないときに、どういうことが起きたのかまった...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-13

まだ明るい日差しが差し込む中、ガウリイは椅子から立ち上がってリナの頭の横に手を置き、そのまま体重をかけた。 間近で見るリナの顔に鼓動は高鳴り、そして心の奥から悪魔の囁きが聞こえる。 このままものにしてしまえ――と。「リナ……」 ガウリイはゆ...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-12

リナの怪我は深いわけではなかったが、肩口から胸にかけて鋭い刃物でざっくりと切られたような状態だった。 シルフィールとアメリアが慌てて『|復活《リザレクション》』で傷を癒したが、傷が広範囲だったため出血が酷く、血が足りず貧血を起こして気を失っ...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-11

こうして暗殺者たちと対峙しても、いるのは暗殺者のみ。それを雇った者は姿を現さない。 何度となく命を狙われているガウリイだが、その黒幕がいったい誰なのか、まったくわからない。 もちろん頭のいいゼルガディスも分からない。できれば生け捕りにして、...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-10

シルフィールは一晩最後にリナの言った言葉を反芻していた。『人は血筋や家柄のみで動かない』 その言葉はシルフィールの胸をまたしても射抜いた。 ここに来てから、人々に望まれているのは良く分かっている。でもそのことに胡坐をかいていなかっただろうか...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-9

シルフィールはエルメキア城に来てから、常に人に見られていた。でもそれは好意のものが多く、不快なものではない。 だから嬉しいものだったが、一つだけ気になるのは、もう一つの注目の的――ガウリイが自分を見るときに感じる感情だった。 同じ五聖家の者...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-8

アメリアにとって、リナは初めてできた親友だった。 王女として育ってきた彼女は、皆に愛されてはいた。けれど、同じ年の子どもたちにはどこか一歩下がって接していた。王女だから、それが理由だろう。 第一王女である姉がいた時は良かったが、その姉がふら...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-7

こうしてミリーナとの小さなお茶会のあと、今度はガウリイと小さなお茶会をするのがリナの日課になった。 リナは食べることが好きなので、二度のお茶会に関しては問題なく、ミリーナともガウリイとも楽しい時間を過ごした。 ガウリイは最初に言ったように、...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-6

いつの間にか、恒例となった温室でのミリーナとの小さなお茶会。 昼下がりのこのひと時は、リナにとってとても楽しい時間だったし、ミリーナから聞くこの国の話は、リナのためになった。 五聖家のこと、国民の暮らし、上流階級に位置するミリーナはいろんな...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-5

すでに入口から射し込む光は赤みを帯びていて、時が夕方だと告げていた。 薄暗くなった厩舎に訪れる者はいない。その中でエルメキア王とその側近に仕えるものが抱き合っているなど誰も気づかない。 けれどリナにしてみると、いつ誰がガウリイを探しに来るか...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-4

それは表面上はにこやかに明るい口調で答えた。 けれど、その口調とは裏腹に、怪しい雰囲気が彼から滲み出ていた。「城にいる以上、一般市民というわけではないでしょう?」「ええ、僕は|神官《プリースト》ですので。たまたま王城に出向いてみれば、王様が...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-3

仲良くなったミリーナと、いつものように温室でおやつをする。香茶の香りに和みながら、王室御用達の料理人が作ったお菓子を摘む。 すでに日課の一つになったこのお茶は、リナにとって何も考えずにのんびりできるときだった。 けれど、それは温室の外から聞...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-2

シルフィールがエルメキア城に滞在するようになってから、一週間が経とうとしていた。 彼女は五聖家であるランドールに養女として入った身で、その姿は清楚で美しく、また女性らしい細かな心遣いなどを見せる。 城の者にもこれならガウリイの正妃として相応...
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第2章 自覚~思いが通う瞬間-1

タタタと人のいない廊下を足早に歩いた。リナは少しでもいいから早く執務室から遠ざかりたかった。 本当は用などない。朝、ゼルガディスに言われた仕事は、今日の午後はシルフィールの相手をすることだ。 でも、あそこにいるのはなぜか苦痛に感じて、本当に...
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第1章 出会い、そして、再会-15

ガウリイにとってゼルガディスの言葉は衝撃的だった。 どこかで望みはあるだろうと思っていたのに、そんなものは欠片もなかった。 そして、自分の思いを通せばリナが傷つくだけだと知って、体が凍りついた。「そんな……それじゃ、どうしたら……」 震える...
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第1章 出会い、そして、再会-14

「その前に、リナに関することが分かった」 ガウリイはそれを聞いて、酒瓶に手を伸ばした手が止まる。一呼吸置いてから、ガウリイは短く「話してくれ」と返した。 ゼルガディスは頷いて、羊皮紙を見つめながら淡々とした口調で語りだした。「まず結論として...
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第1章 出会い、そして、再会-13

夕食は新たなメンバーが加わったため、親しい者――ガウリイ、ルーク、ゼルガディス、そしてリナの四人での食事になった。 しかし給仕する者がいるため、リナはガウリイに対して変な口の利き方をしないようにと心がけた。途中でリナがガウリイに質問されて、...
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第1章 出会い、そして、再会-12

どうしてこんなことになったんだろう――リナは今の自分の状況を考えていた。 いつもの自分なら魔法を使って力づくでも逃げることはできたし、今もガウリイは強い力で拘束しているわけじゃない。けれどその腕を拒否する気になれなくて、抵抗する気が起きなか...
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第1章 出会い、そして、再会-11

リナはそのままガウリイに促されて歩いていく。城の中で、さらにガウリイに肩をつかまれた状態では、もう逃げることはできなかった。 その間、至るところから好奇心の目で見られて、リナは連れてこられたことを激しく後悔した。なんでこんなところまできてし...
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第1章 出会い、そして、再会-10

ガウリイの爽やかな笑みと話の内容に、皆一瞬きょとんとするが、その後猛烈に反対の声が上がった。「おい、なに考えてるんだ!? こんな得体の知れない小娘を雇うなんて!」「お前、本当にロリコンかよ!?」「はあ!? なんであたしがあんたんとこで働かな...
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第1章 出会い、そして、再会-9

暗殺者を一人氷漬けにしたまま、四人はそのまま動けないでいた。 三人はリナの力に驚愕し、リナは現実を突きつけられてとまどった。 リナが今まで相手にしていたのは、ゼフィーリアにいた盗賊たち。たまに魔法を使うものがいて、その力にしょぼいなーとは思...
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第1章 出会い、そして、再会-8

「リナよ、リナ=インバース!」 リナは堪えきれずに叫ぶように自分の名を口にした。『インバース』はリナの父方の祖母の生家のファミリーネームだ。 しかし、祖母は一人娘で、祖母が嫁いだ後は家を継ぐものがおらず、インバース家は断絶して現在は存在しな...
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第1章 出会い、そして、再会-7

「あの……いい加減離してくれないかしら? ってか、あのタオル取ってくれればいいんだけど」 いつまで経っても離さないガウリイに、リナはもじもじしながら、ガウリイの後ろを指差した。 タオルはそのままの体勢でも、ガウリイが手を伸ばせば届く範囲にあ...
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第1章 出会い、そして、再会-6

エルメキアは赤の半島の中では南にあり、ゼフィーリアに比べると暖かい。すでに春と呼べる季節だ。 周りには新しい草芽や、花が咲いている。小鳥のさえずりなども聞こえ、平和だな、と思う人が多いだろう。あちこちに小川などが流れていて、水に困ることはな...