「もうっ! ガウリイさんてばしっかりしてくださいよっ!!」
「そー言われてもなぁ……」
わたしの目の前でちょっと情けなさそうにしているのは、結構長い間一緒に旅をしたことのあるガウリイさんという金髪の凄腕の剣士さん。
そう、剣の腕はすごいんだけど、どうも、一緒にいるリナのことになると、ガウリイさんてばすごく情けなくなるっていうか……。
「だけどリナってば、最近すごくきれいになったと思うんです。うかうかしてたら誰かに取られちゃいますよ!」
「うー、それはそうなんだが……」
一緒に旅をして別れたあと、二人は伝説級の事件(?)に出会っていたみたい。そしてそれが一段落したから、リナの郷里であるゼフィーリアに一緒に行くというのよね。
その道中でここ――セイルーンによってわざわざ会いに(というか、リナのことだから絶対おいしいもの目当てだと思うんだけど)来てくれたの。でもって、二人の関係をリナに問い詰めて聞いてみたら一緒にブドウを食べに郷里に行くのだと言う。
でも、ブドウだけかしら? 普通女の子の実家に行くって絶対「お嫁さんにください!」だと思うんだけど。
リナに聞いてみると、ガウリイさんはただ「ブドウが食べたい」とだけしか言わないという。
で、ただ今ガウリイさんに詰問中なんだけど、成果はいまいちというところ。
「リナってオクテだろう? だから、なんて言っていいのか。下手に意識して避けられるのも嫌だし……」
思わず、くすっと笑ってしまう。
リナのことをオクテオクテと言うけど、リナに対する態度ってガウリイさんも十分オクテに入るわ。この煮え切らない態度はちょっとイライラしてしまうほど。
ガウリイさんって、下手に顔が良いから自分からアプローチしなくてもいいんだろうし、リナとの年の差や長年保護者をやっていたことを考えると、どうしていいのか迷っちゃうのかしら?
どちらにしろ――
「とにかく! あたって砕けろ! です!!」
「いや、砕けたくないし……」
情けなさそうな顔をして弱気な抗議をするガウリイさんの腕を引っ張り、リナの元へと連れて行こうとする。
確かリナは庭園のほうでお茶をするって言って待たせてあるんだっけ。
「あめりあーっ」
「弱気になってはダメです!」
そう言ってガウリイさんを引っ張っていく。
わたしは結構力があるから、ガウリイさんをぐいぐいと引っ張って行けちゃうのよね。
***
「アメリア、遅い!」
「リナっ! それよりもガウリイさんが話があるって」
「話? なんなのガウリイ? あ、このケーキならあげないわよ」
そう言っていじきたなくケーキを体で隠すようにするリナ。
あぁんもうっ、ケーキどころの問題じゃないってばっ!
そんなリナを余所にわたしはガウリイさんを押し出すようにリナの前へと押し出した。
「ほらっ、ガウリイさん」
「あ、ああ……あの、だな。リナ……」
「なによ?」
「えと……その、だな……」
ガウリイさんはテレながらもじもじとしているだけ。
リナもリナで鈍いのか、ガウリイさんが何を言いたいのかぜんぜん察しないし。
「あーもう、じれったい! さっさと言っちゃってくださいっ!」
焦れったさから、ガウリイさんをドンと突き飛ばす。
その拍子にガウリイさんは躓いて、どたーんっと派手な音を立てて、リナを巻き込んで倒れこんだ。
「きゃーっ! リナっ! ガウリイさんっ!!」
慌てて覗いてみると目を回している二人。
だけど……
「きゃーっ! なんておいしいシーンなの!? これはぜひとも記録しなければっ!!」
そう思ってわたしは急いで部屋へ戻り、一つの記憶球を取ってこようとして――
「あ、『影縛り』!」
念には念を入れて、ね。
二人を動けないようにしてから、急いで記憶球を取りに行ったのだった。
***
「ふふふ……二人でリナさんのご両親に挨拶に行くのよね♪」
実はこれ、再会した時に聞いたセリフ。
リナってば真っ赤になって怒って――話にならなかったのよね。
でも。
「ね、リナ? ガウリイさん?」
「ああ」
「……」
「ね? リ・ナ?」
「……………………行きゃいいんでしょっ!!」
真っ赤になってふてくされた感じで言うリナは、それはそれでかわいいなと心の中で思ったけど、あえてその言葉は口にしなかった。
したらもっと真っ赤になって怒りそうだったし。
隣ではガウリイさんが笑みを浮かべている。
実は、あの時二人で転んで、見ると二人とも軽く気を失っていたらしいんだけど、しっかりばっちり唇と唇が触れ合った――キスしている状態だったの!
で、急いでその様子を記憶球に記憶して脅し、訂正、説得したのだった。
大体、リナだってガウリイさんのこと好きなんだから、少しは素直になればいいのに。
「人間素直なのが一番よ。リナ」
お茶を啜りながら、わたしはリナに一言そう言った。
「く……っ、あんたの言うことに応じたんだから、アレ返してよ」
「ダメ」
「なんでよっ!!」
「まあまあ、落ち着け、リナ」
なんだかんだ言っても、思いが通じたのは嬉しいらしく、ガウリイさんはわたしに対して一向に文句を言わない。まあ、その分リナが倍以上言ってるけど。
「アレは記念に頂いておくわ。リナが暴れた時はアレ見せるから」
「なっ……!」
わたしの言葉に絶句して、これ以上言葉が出なくなったらしいリナ。
そんなリナをガウリイさんは「まあまあ」と苦笑しながらも嬉しそうになだめている。
なんだかんだいってもあの二人はあんな感じなんだろうな。
きっと、わたしにはそんな風に本当に好きな人とじゃれ合うことなんてできないだろうから、たぶん二人をくっつけて自己満足をしたかったのかもしれない。
まあ、裏を返せば、それだけ二人のことが自分のことのようにも思えたのかも。
わたしはそんなことを思いながら二人を見つめていた。
だから……あれは思い出にとっておくわ。
大丈夫よ、リナ。
本当に、誰にも見せる気はないから――
ちゃっかり姫好き。